#Long_Slow_Distance (ページ49)

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一緒に行こう -SIDE：＿＿ページ49

SIDE：＿＿

ここ数ヶ月、日本で公演をして
色んな場所を回って
収録や取材やらを続けていたから
まだ脳内が忙しない感じ

久々の落ち着く家だけど
何だかまだ寝る気になれなくて
リビングに出ようとした時、
扉の向こうから話し声が聞こえてくる

内容まで聞き取れない音量だけど
明らかに日本語だということが聞き取れて
ヒョン達がいるってことが分かった

混じって行くには暗すぎるトーン

どうしようかと一度ベッドに戻り
5分くらいが経って、もう一度扉に近付くと
静かになっていて何故かホッとする

ダイニングに座って
何かに向かって書き込んでる、細い背中

「ヒョン」
「あ、ジョンウヤ～♩」

近付くとAヌナはお絵描き中だった

「何描いてるの？」
「色々、適当に」
「ふーん…」
「興味うすっ(笑)」
「ヌナ、寝ないの？」
「うん…もう少ししたら」

お酒飲みたいけど迷うな～って
大人のお姉さんみたいな一人言まで溢して

冷蔵庫の前で水を飲みながら
無意識にヌナをぼ～っと見つめてると
"さっき悠太くんと話した"と教えてくれる

「ジョンウ…埼玉公演の時、沢山ありがと。夜中まで待っててくれたのもそうだし、最終日もそうだし、ステージの上でもずっとケアしてくれようとしてたの気付いてたよ」
「やっぱりヌナ…気付いてた？ぼくあからさますぎたよね(笑)」
「うん。だからすごく嬉しかった」

自虐っぽい笑顔で
"ヌナは何もしてあげられなくでごめん"
って言うからぼくは少しだけ腹が立つ

「どうして？これほど良くしてくれてるのに」
「…うん」

ヌナは時々トゲっぽくなるって事を
一緒に時間を過ごして知るようになった

自分以外の全てが敵だと思って
しかもただ殻に籠るだけじゃなくて
少し足掻いて、他人を傷付けようとしてみるらしい

だからぼくは気が付いた時にちゃんと咎める

上下関係は一切なしにして

ヌナがぼくを正して導いてくれるように

「ヌナ、ぼくら一緒に行かなきゃ。だよね？」

初めてヌナと外食した日を思い出す
あの時はヌナがひたすらに眩しい存在に見えた

そんな風に見たのは、ぼくの勝手だった

少しずつ弱くなっていく姿に
誰しも同じようなものなんだって、思い知らされる

「ヌナ？」
「うん。行かなくちゃでしょ」

"だからそんな顔しないで"と
ぼくを責めるように言ってヌナは顔を伏せる

ぼくはヌナを励ましてるつもりなのに
鏡を見ているような気分になるのは何故だろう

浮わついた感情がもやもやと残った