検索窓
今日:15 hit、昨日:0 hit、合計:59,722 hit

karte 170 −helpless− ページ10

.


人気のない地下駐車場で

ようやく潤の背中に追いつく。





ここは、一般用の駐車場とは別に

業者や職員用の駐車場として用意されている。


一般の患者が使うことは想定していないため

照明も暗く、無機質なコンクリがむき出しだ。


亡くなった人を運び出すためのの霊柩車も

この地下に付けられることになっていた。


そのせいなのかなんなのか

いつもひんやりとした空気が漂っている場所だった。





「潤!!」





俺の声が、薄暗い駐車場には場違いなほど響いた。





その声に、潤が足を止める。

でも、振り向こうとはしない。





「潤!!」





俺はもう一度、その名前を呼んだ。

潤は立ち止まったまま、でも俺の顔を見ることなく

『何の用だ?』

とだけ言った。


その背中は全てを拒絶するかのようなオーラを放っていた。


と同時に、潤がこれまで背負ってきた

壮絶な孤独と絶望的なまでの悲しみが

にじみ出ているようにも感じた。





声をかけようとして、思わず言葉に詰まる。





お前は…

お前はひとりで何を抱え込んできたんだ?


きっとそれは

俺なんかには想像も及ばない物なんだろう。


そして俺は、今の今まで

何も気づくことなく、お前のそばにいたんだな。





自分の愚かさを呪ってみても

今さらどうにもならない。





お前がこれから何をやろうとしているのか

本当のところは俺にもわからない。


お前を責め立て、その何かをやめさせることなら

俺にもできるかもしれない。


けど、それじゃダメなんだ。

それじゃあ、お前が救われない…そうだろ?





せめて、お前の孤独を…悲しみを…

俺が半分…1/3…いや、ほんのちょっとでもいい

少しでも一緒に背負える存在になれたら

そうしたら、お前は……





.

karte 171 −渇望−→←karte 169 −このままじゃ…−



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (110 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
345人がお気に入り
設定タグ:潤翔 , 大宮 , 医療系
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:author | 作者ホームページ:http  
作成日時:2015年1月20日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。