karte 161 −sympathy− ページ1
.
『復讐、です…』
彼女の口から
思いがけない言葉が飛び出した。
どういうことだ？
『復讐』って……
この一連の騒動の原因が
誰かの『復讐』だってのか？
でも一体誰が？
彼女の言う『あの人』なのか？
それって……
あっ！………
『その遺族とやらが
どこを探しても見つかんねぇんだよ。』
俺の頭にあの男の言葉が甦る。
そうか…
そういうこと、なのか？
これは、その遺族の誰かの
『復讐』なのか？
それが…『あの人』……
｢先生は……
誰かを殺したいほど恨んだことは
ありますか？｣
｢えっ？……｣
｢ふふっ…ある訳ないですよね…
こんな立派な病院の御曹司なんですもの…｣
｢…いや、俺は……｣
｢すみません、失礼なこと言って……
でも、変な意味じゃないんです。
純粋に…ただ純粋に羨ましいなと思って……
私も、先生のような立場に生まれてきていたら
もっと違った人生があったかもしれないのに……｣
｢違った、人生？……｣
｢はい……私も…きっと、あの人も……｣
そういうと彼女は何かを思い出すように
天井をじっと見つめた。
｢初めてあの人を見た時…
まるで天使が舞い降りてきたのかと思いました…
周りがパァッと明るくなるようで…｣
ここにはいない誰かを思い浮かべたのか
彼女は"ふふっ"と小さく笑った。
｢患者さんに語りかける微笑みは
本当に天使のように美しく優しくて…
そしてそのオペは素早く的確で
そして迷いがなくて…
そう、まるで神様が乗り移ったかの様に
見事なものでした…｣
｢……えっ？｣
ちょっと待て…
……どういうことだ？
それって、俺があの時感じたのと
まるで同じじゃないか……
『彼の腕は、まさに……神業だ。』
.
どういうことなんだ？
それってまさか、まさか……
.
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