少女Aの日常 in立海 (ページ10)

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第９話　　私だって笑いますけど。ページ10

結局丸井君も来ることになった。
まったく、食材が足りなかったらどうしてくれる。足りたけど。

部屋の向こうからは、三人の遊ぶ声が聞こえてくる。
いや、本当にいいお兄ちゃんだな。
さっきも料理手伝ってくれようとしたし。
もっとチャラいの想像してたよ私は。ごめんよ丸井君。
だからといって仲よくはならないけども。

「ご飯できたよー」

「「はーい！」」

返ってくる無邪気な声に、私は母親かと思わずツッコむ。
走ってきた弟君達は、料理を見ると目を輝かせた。
後から来た丸井君も、それを見て目を見張る。
三人は仲よく声を揃えた。

「「「超うまそう!!」」」

「…え、ありがと…」

「食っていい！？」

「…どーぞ」

「「「いただきまーす!!」」」

パン、といい音を鳴らして、三人は手を揃えた。
いただきますなんて言ってもらえたの、何年ぶりだろう。
だっていつもは一人だし、仮にローがいたって、あの人いただきますとか絶対言わないし。

てゆーかこれが普通なんだよ。
ローが酷いだけだって絶対。

「……どうかな、お味は」

「超うまい！お前、マジ天才的！」

「うん！お姉ちゃんすごい！」

「母ちゃんのよりうまいよ！」

「……いや、そんなことはないと思うけど」

そんなことある！
勢いよくそう言ってくれた弟君は、その勢いのままガツガツとご飯をかき込んだ。
ああ、いい食べっぷり。

それを真似して、あとの二人もかき込んだ。
丸井君、小学生と同レベってどうなんだ。
…でも、楽しいかも。
ふっと頬を緩めると、丸井君が目を見開いた。どうした。

「！おまっ…」

「……何」

「笑った…！」

「……は、」

何だそれは。
いくら普段私が無表情だからって、それはないんじゃないのか。
お前は私を何だと思ってるんだ。アンドロイドか。

「…私だって人間だよ。…普通に笑うよ」

「そ、そっか。だよな！」

「…うん」

丸井君は少し挙動不審だったけど、めんどくさいので放っておいた。
そして三人は、ご飯粒ひとつ残さず綺麗に食べてくれた。

…たまにはこういうのも、悪くないかもしれない。