少女Aの日常 in立海 (ページ7)

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第６話　　優しさは罪だ。　ページ7

さあ、この状況をどうやって打開すべきか。
私がこんなにも悩んでいるのは、真横に柳生比呂士がいるからだ。
事の始まりは10分前。

「工藤、これ職員室に運んでくれ」

「えー…」

「頼んだぞ」

「……」

担任はそう言って、束になった教科書を置いて行ってしまった。
くそう、めんどくさがりなくせにお人好しって、どんだけめんどくさい性格してんだよ私。
ぶつくさ文句を言いながら、結局はそれを運んでしまう。
おかげですっかり担任に目を付けられてしまった。

「手伝いましょうか」

不意に後ろからかけられた声。
手伝ってくれるなんて、なんていい人なんだ。
私は嬉々として振り返った。
が、次の瞬間には固まった。
なぜなら、それがテニス部の柳生比呂士だったから。

「……いや、いいです…」

「おや、あなたは確か工藤さ…」

「違います佐藤です」

「え…」

私の切り返しに困った顔をする柳生君。
しかし彼は少し考えてから、苦笑した。

「すみません。では佐藤さん、お手伝いします」

私は柳生君の優しさのせいで、その申し入れを断れなかったのだ。
…優しさって罪。
そんなこんなで、冒頭に戻るわけだ。

私が話しかけんなオーラを出してるもんだから、やたらと沈黙が重たい。
さっさと荷物を運べばいいのだが、なんせ無駄に広い立海の校舎。
職員室がとてつもなく遠い。
ふとおもむろに、柳生君が口を開いた。

「くど、…佐藤さん」

「……はい」

「テニス部の事、どう思ってますか」

「めんどくさい非凡の集団」

「即答ですか…」

苦笑する柳生君。
申し訳ない、でも本音なもんで。
柳生君は苦笑しながら言った。

「確かに非凡ですが、いい人ばかりですよ」

「……」

「もしかしたら仁王君が失礼なことをするかもしれませんが、出来れば許してあげてください」

「……無理かな」

柳生君はまた苦笑。
なんだかさっきから苦笑させてばっかりだな。
すると柳生君は、今度は苦笑ではなく、とてもいい笑顔で言った。

「マネージャーの件も、できれば真剣に考えてみてくださいね、工藤さん」

「……はい」

そのキラキラ笑顔に負けて、私はつい頷いてしまった。
もしかしたら一番厄介なのは、幸村君や柳君ではなくて、いい人すぎる柳生君なのかもしれない。