少女Aの日常 in立海 (ページ4)

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第３話　　二度あることは三度ある。ページ4

二度あることは三度ある。
私はその言葉を作った人を、今心の底から尊敬する。

「よう、Aちゃん」

「……人違いです」

「嘘つくんじゃなか」

「……」

現在私の前にいるのは、銀髪の目立つ仁王雅治。そして私の後ろは壁。
要するに、私に逃げ場なんてものは存在しない。
普通の女子なら気絶モノなんだろうけど、生憎私は普通じゃない。今すぐ逃げたい。
ていうか、何勝手に名前で呼んでんだ仁王君。

「早速じゃがAちゃん、」

「断る」

「…まだ何も言っとらんじゃろ」

「どうせマネージャーの話だろーが」

「正解ぜよ」

ニコッと微笑む仁王君。
周りからは悲鳴に似た歓声が起こり、私はというと鳥肌が立った。
何だ、このうさん臭すぎる笑顔。
と言うか、向ける相手を確実に間違えている。

「…そもそもなんで私。他の子に頼めばいいじゃん」

「それじゃダメなんじゃよ」

「じゃあマネージャーは一生できないね。さよなら」

「待ちんしゃい」

無理やり逃げようとしたら腕を掴まれた。
また悲鳴が起こる。…もう勘弁してくれ。

「Aちゃんは俺の誘いを断った、たった一人の女なんじゃよ」

「……はい？」

「去年の班決めで女子に群がられとった俺は、俺に見向きもしない一人の女子を見つけたんじゃ」

「……それが私だったと」

「話が早くて助かるのぅ。それで俺はAちゃんを誘ったんじゃが、ものすっごい嫌そうな顔で断られたナリ。あんなのは生まれて初めてぜよ」

「……」

うっわあ、何やってんだ去年の私。
こんな風に顔覚えられるなら、嫌でも同じ班になっときゃよかった…！
しかもその事、全然覚えてない。
それが顔に出ていたのか。

「覚えてないじゃろ」

「……全く」

すると仁王君は吹き出した。
かと思ったら、今度は盛大に笑い出した。
何だ、どうしたこいつ。頭湧いたか。

「ほんとに面白いのぅ、Aちゃんは」

「…え、何が。というか、その名前呼びいい加減やめようよ」

「そんな事言われたんも、生まれて初めてぜよ」

「…そんな馬鹿な」

どんだけ人気者だよお前。もう怖いよ。
すると、突然私の体は解放された。
仁王君がずっと掴んでいた腕を離したのだ。
そして彼は、にやりと妖艶に笑って言った。

「絶対落としてみせるから、覚悟しときんしゃい」

絶対落ちない。
私は去っていく彼の背中に固く誓った。