少女Aの日常 in立海 (ページ22)

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第２１話　　気に食わない。ページ22

時計の針が８時をまわった頃、切原君が目を覚ました。

「…ん、あれ、ここ…」

「…目、覚めた？」

「！アンタ…」

「…警戒しすぎ」

私を捉えた切原君の目は、見る見るうちに険しいものへと変わっていく。
あからさますぎやしないか、切原君。結構傷つくぞ。
私は敢えて冷静に話しかける。

「…切原君、何したの。ケンカ？」

「アンタに言う義理なんかねーよ」

短気な私は、それだけでキレた。
彼の腕を反対方向に捻る。

「…何したの？」

「いっ!?いって、何すんだよ怪我人に！」

「質問に答えない切原君が悪い」

「だから、何でアンタにそんな事言わなきゃなんねーんだよ！」

「…言えないようなことなわけ？」

「！…別に」

嘘下手くそだな、切原君。
これは、無理やりでも聞き出すに限る。
そして切原君との攻防が続くこと、約５分。勝った。

「……俺、目つき悪いから…、他校の奴に目つけられて…」

「……」

「一度は返り討ちにしてやったんだけど、今日…」

「……」

「…友達、人質にとられて…！」

「…！」

「俺が手出したら、そいつが怪我しちまうし…」

「…そっか」

拳をギューっと握りしめる切原君の頭に手を置く。
よしよしと撫でると、切原君が驚いたように目を見開いて、慌ててその手を振り払った。
ひでーなオイ。

「…切原君」

「…んだよ」

「よく頑張ったね」

「な、」

まさかこんなことを言われると思っていなかったのか、焦りだす切原君。
うん、なんか思ってたよりいい子だった。
これはちょっと、体が疼くな。

「…その人達って、今どこにいるかな」

「は？んなこと聞いてどーすんだよ」

「いいから」

「…たぶん、港近くの東倉庫…って、アンタまさか行く気じゃ…！」

「まーまー」

言いながら、私は立ち上がる。
東倉庫ならチャリで十分。
よし、と呟いてローに声をかける。

「行ってくる」

「おう。怪我でもしたら治してやる」

「しないよ」

「待てよ！アンタが行ったって、何にもなんねーよ！」

「…怪我人は黙って寝てなよ」

わめく切原君を無視して、私はとっとと家を出る。

人質とか、何それ。
気に食わない。
私がぶっ飛ばしてやる。