意を決して ページ42
カズに相談してから悩んで悩んで
S「…あ、翔です」
本当に久しぶりに母親に電話をした
カミングアウトをしてから音信不通(というか絶縁状態)の両親
弟妹は「まあお兄ちゃんがいいなら」と一応許容してくれてはいるんだけど
名乗らなくてもきっと俺の名前は登録してあるままだろう
名乗ったあと、電話の向こう側に居るはずの母親の声が聞こえなくて
S「…母さん?」
「…っ」
それが必死で嗚咽をこらえてるんだってわかって
S「ご、めん…っ」
俺も思わず涙が溢れた
、
S「ちょっと出てくる」
J「どこ行くの?夕飯は?」
S「夕飯までにはもどるよ」
キッチンに立つ潤には理由を告げず(潤も深くは聞いてこないから有難い)
J「今日はビーフシチュー♪」
S「パンでも買ってくるわ」
そう言って部屋を出た
向かった先は母親が指定してきたカフェ
あの電話のあと、漸く紡げた言葉が「会いたい」だった
無理だとは言えなかった
数年ぶりに会う母親は
良くも悪くも変わってないように見えた
「あなたは変わったわね」
S「…そう?」
席に着くなりそういう母親
どことなく安心したように思えた
「うん、幸せそうに見える」
なんて応えていいか、わからなかった
運ばれてきたコーヒーを飲みながら
母親が話す家族の近況をただ聞いて
うんうん、と相槌を打つ俺に
「今から、お相手の方に会える?」
S「え…?」
「せっかくだし、相手を知らずに反対するのは母さんの性格的にモヤモヤするの。ちゃんと知って、それでもダメなら正面から反対するわ」
そう言って笑う母さんに
S「…わかった、ちょっと予定を聞いてみる」
潤なら家できっととびきり美味いビーフシチューを仕込んでいるだろう
それでも、潤にちゃんと確認をしないと、と
スマホを手にとった
、
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作者名:なち
作成日時:2016年12月30日 14時