９２話 あなただけに [大野] ページ18
記憶は、これからもずっと消えてくばかりだと思ってた。
こんなふうに懐かしいと思うことが
何かをふと思い出すなんてことが
あるっては、思ってなかった。
夜風がふわんと髪にかかる。
ブランコに揺られながら
何がこんなに懐かしいのか
しばらくずっと考えていた。
そのうち音もなく止まったブランコ。
ポンポンと肩を叩かれて
翔くんを振り向くと、そんまま公園の出入口へ歩いてく。
ゆっくり腰を上げて俺もそのあとを追った。
大きく左へ曲る道の先は
暗闇の中で見えない。
少し離れただけで
翔くんすら見失いそうで…
俺は自然と足を早めた。
翔「…まだ、不思議なんだ」
ピタリと後ろについて、Tシャツの背中を掴む俺を
ほんの少し振り返って翔くんは笑う。
翔「確かにここにいんだけど、本当にいるのか…まだ分かんないっつうか」
街灯は、今日も翔くんの影だけを道に落とす。
翔「だって、母さんが死んだ時も…いたってことだよね。智くんじゃなくてもさ、死神が」
「うん」
翔「それってすごい…不思議なんだ」
「そうかな」
翔「そんな素振り全然見せなかった。俺が鈍いだけかも、しれねえけど」
「ふふ」
俺が笑うと、つられたように翔くんも少し笑った。
笑ってまた、夜空を見上げる。
翔「夢なんじゃないかって、思う。俺が智くんたちのこと、勝手に頭ん中で作ってさ…」
「……うん」
また少し、笑う。
翔くんは俺を振り向いて
俺の相槌の意味に、首をかしげる。
だからちゃんと翔くんを見上げて
目を合わせた。
「会いに行ったじゃんか、彼女に。ニノがいたから。…俺たちが翔くんの夢なら…それはそれでいいけどね」
翔「それはそれでって…」
「おんなじことだよ。翔くんだけに、見えてんだ」
翔「…うん」
そうか。夢か。
なんだかやけに納得した。
俺は、翔くんの夢。
ほんの気まぐれでここにこうしていて
でもここにいることすら、翔くんの頭の中の話ってわけか。
悪くないな。
悪くないね。
「死神」って言葉より、「翔くんの夢」の方が
ずっといいやって…思うもん。
この懐かしい感覚も、それじゃあきっと、夢のせい。
「…最後まで一緒だから」
翔「うん」
「夢が終わっても、また一緒にさ…」
翔「え？」
「…何でもない。翔くん…行こう」
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あかり - ぜひ見させていただきます！！ (2015年8月9日 21時) (
レス) id: 1ac7fc90e9 (このIDを非表示/違反報告)
ふみちゃん(プロフ) - あかりさん» そう言っていただけると本当に嬉しいです！よければ他の作品もよろしくお願いします。 (2015年8月9日 20時) (レス) id: f36ed0f5f4 (このIDを非表示/違反報告)
あかり - とてもおもしろかったです！完結おめでとうございます((o(*>ω<*)o)) (2015年8月5日 21時) (レス) id: 1ac7fc90e9 (このIDを非表示/違反報告)
ふみちゃん(プロフ) - 花夜さん» 花夜さん、ありがとうございます。今後の励みになります♪ (2015年7月30日 22時) (レス) id: f36ed0f5f4 (このIDを非表示/違反報告)
花夜 - 凄く面白いです!!! (2015年7月27日 15時) (レス) id: 7e159a367e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ふみちゃん | 作成日時：2015年5月20日 17時
