８８話 掬った手 [櫻井] ページ14
もう何本目だろうか。
智くんは飽きもせずに線香花火と睨み合ってる。
すでに対決じゃなくなっていた。
落ちた頭を踏んで、また新しいのに火をつけて…
「智くん、これいつまでやんの」
智「もうちょい」
「そう言ってからもうだいぶ経つよ？」
智「……もうちょいだよ」
松潤の作ってくれたポップコーンを摘みながら
花火の大袋からもう一本引き抜いた時
不意に智くんがこっちを見た。
その反動で、ぽとり。と落ちた線香花火が
まだ消えずにパチパチと音を立てて燃える。
智「あんさ、俺…」
「ん？」
智「翔くん、俺…」
「う、ん…」
智「怖い…俺の方が」
…
そっか。
忘れてたけど、俺死ぬんだったな。
俺は何も知らないけど、智くんは全部知ってるんだもんね。怖いよね。
掠れた声で呟いた智くんの手を
そっと掬い上げるように握った。
「ゴメンね。…智くん」
智「やめろよ、謝んなって、ほんと…」
「うん…」
智くんを見てると辛くなる。
智くんだけじゃない。
キャンプグッズ用意してくるね〜☆って一旦家に入った３人だって、そう。
Aと別れたように
きっとさ…
「もういいよ」
智「…何が」
「ちょっと一人にしてよ」
智「……」
「お願い」
ニコリと微笑んだのに
ガッと肩を掴まれてビックリした。
智「無理だし！出来るわけねえじゃん！一人にしたらだってもう…翔くん…
……やだよ…」
線香花火の匂いが目の奥に染みる。
だから、やめようって言ったんだよね、ニノは。
本当に寂しくなっちゃったな。
コトン…と頭を垂れた智くんの額が
そっと膝の上に当たる。
智「翔くん…」
「ん…？」
智「オイラ上手くサヨナラとか、言えねえよ……」
「ふふ…。いいよ、別に。言わなくて」
智くんの頭に触れると、
ふわりとした感触にホッとした。
夜が少しずつ、動いていく。
すうっと空気を吸い込むと
体が軽くなるような不思議な感覚がした。
目を閉じて、また開けて。
真っ暗な空を見上げて風の音を聞く。
一週間前は信じていなかったこの瞬間のことを
何だか急にスッと分かったような。
「智くん、ちょっと…退いてくんない？」
静かに顔を上げた智くんを残して立ち上がったら
何だか自然と足が動いた。
智「…翔くん…」
「…ん？」
智「…好きだよ…」
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あかり - ぜひ見させていただきます！！ (2015年8月9日 21時) (
レス) id: 1ac7fc90e9 (このIDを非表示/違反報告)
ふみちゃん(プロフ) - あかりさん» そう言っていただけると本当に嬉しいです！よければ他の作品もよろしくお願いします。 (2015年8月9日 20時) (レス) id: f36ed0f5f4 (このIDを非表示/違反報告)
あかり - とてもおもしろかったです！完結おめでとうございます((o(*>ω<*)o)) (2015年8月5日 21時) (レス) id: 1ac7fc90e9 (このIDを非表示/違反報告)
ふみちゃん(プロフ) - 花夜さん» 花夜さん、ありがとうございます。今後の励みになります♪ (2015年7月30日 22時) (レス) id: f36ed0f5f4 (このIDを非表示/違反報告)
花夜 - 凄く面白いです!!! (2015年7月27日 15時) (レス) id: 7e159a367e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ふみちゃん | 作成日時：2015年5月20日 17時
