Bon voyage 2 (∞) (ページ1)

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糸 ① ページ1

Side purple

出会った頃から、異彩は放ってたと思う。

相手が人見知りでも誰かれ構わず、ガンガン話しかけにいける自分にはいまさらながら感謝もしとる。

そうやないとAと仲良くなるんは、もっと先やったかもしらへんからなあ。

「なあ、Aのことやねんけど、」

デビューして数ヶ月経った頃、年上三人で飲みに行ってた。Aの話題を出したのはヨコやったっけ。

「俺らってそんな頼りないかなあ？」

「なんやねん急に」

「やって昔から一緒におるけど、弱音も吐かへんし泣きもせんやんか。今日やってあからさまに理不尽な扱いされとったのに」

Jr.ん頃から、それは一緒やった。

自分でできることは頼らへんし
アホなフリもせーへんし
悔しいとか悲しいとか、そういう負の感情も見せへん

いつか、壊れるんちゃうかなって。

漠然とした不安はあってん。
でも、どうしたらええか分からへんくて。

「俺らがなんぼ味方やって示しても、Aがそう思ってへんかったらどうしようもないやんか」

「…でも俺らやっておんなじちゃう？」

「え？」

「あいつが理不尽な扱いされてきたんは今までやってそうやったやろ。そんとき俺らは何かしてやれてたか？」

ヨコの声とすばるの声、どっちも聞きながら考えてた。

…何もしてやれてへんかもしらんな、って。

Jr.ん頃は、それこそ同じJr.のやつがしとった嫌がらせとか、そういう目に入るものからは守ってやれてたかもしらへん。

…でもそれも、俺らが見つけたときだけや。
放っといたらAはきっと、誰にも何も言わへんやろうし。

「これからのほうがきっと、しんどいこと続くやろうし。…俺らに何も言わずに壊れたらどうすんねん」

「…」

「…どうせえ言うねん…分からへん…」

味方やで、って言うのは簡単や。
それが目に見えたとき、行動で示したときにきっと、信じられるもんになるんやと思う。

「…どっかで甘えてたかもしらへんな。Aは強い、って。Aなら大丈夫や、って」

「…今まで以上に本気で向き合うしかないわ。オトナの理不尽にも、俺らの環境にも、Aにも」

「無茶すんなよすばる」

「…もし俺が、」

「…」

「あいつ…Aんこと泣かしてもうたら、フォロー頼むな」

それからすぐ。すばるがトイレにゲーム落として泣いとったわ。