守りたいもの �� ページ46
Side black
自分のことばっかりになってたなあ、って。
ヤスにそれを聞いて思った。
早めにきて、昨日のプロデューサーの周りで働いてるスタッフに確認したらそういうことは前から言うてたらしい。
最年長やから、しっかりせな
このグループ引っ張っていかな
仕事もらわなアピールできひん
いっぱいいっぱいになってたんは、俺だけちゃうのに。
「はよプロデューサーに返事せえよ。今日は俺と寝るから行けません、て」
「すばるくん膝から落とすで」
同期とはまったく違った、アイドルの道。
…そうや、俺。
他のやつらとまったく違うことに、ワクワクしてたやん。こいつらとなら絶対楽しいわ、って。
「ほんであのプロデューサーどうするん？」
「よかーまくん、チンピラみたいやし殴り込みにいったら？」
「誰がチンピラや！」
「それはそうと黙ってるのも無理な話やし」
「…言うん？言ったらみんなに…むぐっ」
心配そうな顔してそんなん言うAの頬を、すばるが下から掴む。
「ヨコのことやから見返そう、言うで」
「言うなあ」
「ほらはよ言うてよ横山くん」
「なんで俺こんないじられてるん」
「時間ないって横ちょ」
こうなったら言うまでいじられるやろうし、
他にいい案も思いつかんし、
…ああもう！
「…見返すしかないやろ！他に何があんねん！」
「事務所に報告するとか」
「ブラックリスト載せるとか」
「な、」
「ま、俺らがでっかくなったらこんなこともなくなるわ。見返すで」
「楽しみやなあ、でっかくなるん」
「ていうかAお前、知らん人について行ったらあかんて習わんかったか？！」
「知ってる人やん」
「あんなどこぞのおっさん知らんうちに入るねん！」
「そうやでA！あー、良かったあ。触られんで済んだあ」
「やからって抱きつくなや大倉！！」
楽屋でのこの時間が、きっと好きなんはみんなそう。
バカ騒ぎしてスタッフさんに怒られたり
どうでもええ話に共感したり
たまに真面目な話して、熱くなったり
ここに帰ってきたいなあ、思うもん。
そらたまにはムカつくしうざったいこともあるけど。
「お兄ちゃん、」
背中にのるA。
「どしたん」
しっかりした根っこ張らな、でっかい花は咲かせられへん。右にも左にも、どこまでも。
「…いつか後悔せんとってな？」
「するときは一緒にしようや」
「ふふっ」
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作者名：petrichor | 作成日時：2020年3月9日 11時
