Bon voyage （∞） (ページ35)

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ハラハラ ⑤ ページ35

Side blue

「え？！」

「んふふ、びっくりした？」

「めっちゃ！でもその倍うれしい！頑張ろうなあ！」

…って、主演を務めさせてもらえるドラマに、Aが友情出演することを聞いて、嬉しくて。

でも悲しいことに撮影が被ることはなかったから、Aの演技も見られへんし、電話やグループの仕事で話聞くことしかできひんかった。

いま思えば、おかしな話やねんけど。

「少し早く現場に着きますね」

「…あれ、この時間やったらAおるんちゃう？」

「そうですね。確か今日がクランクアップだったと思います。顔出されますか？」

「うん、今まで一緒なることなかったし！ちょっと行ってくるわ～」

マネの運転してくれる車から降りて、あらかじめ聞いたスタジオへ直行。

お世話になってるスタッフさんの、あからさまに動揺した態度に疑問が芽生える。…なんやろ？俺がおったら都合悪いことでもあるん？

……A？

スタッフさんをかき分けて、よく見える位置へ。

「な、」

聞いた覚えのないシーン。
何度も平手打ちをされて、頬を赤く腫らせたAがおった。

…そういうことか、と理解する。

相手は監督のお気に入りやて噂されとった子や。
…せやったらなんでもしてええんか？ほんまに必要なシーンなんか？

握った手のひらに爪が食い込む

カットがかかったんと同時に、Aのもとへ駆け寄るとその場がざわついた。

「…章ちゃん？なんで、「Aさんクランクアップです！お疲れさまでした！」」

おっきい花束受け取って、最後やのにその顔は赤く腫れてて。笑ってるのに、歪んでるように見えて。

水を差すようなことしたくないし。

この役やって、Aが一生懸命やっとったんはスタッフさんからも聞いてた。やからこそ、いつもの笑顔がみたかった。

「短い間でしたが、ありがとうございました。たくさん勉強させてもらったので、この恩を返せるようにこれからも頑張ります！」

たくさんの拍手。
その中でグイッと腕を引っ張られて、ちょっとだけよろけて。

「章ちゃん帰ろ。カッコ悪いとこ見せてもうてごめんな」

そんなん、言うから思わず叫んでもうた。

「あほ！めちゃくちゃカッコええわ！！」

あ、って思ったときには静かなスタジオ。
キョトン、てしてた彼女の目は次第に潤むから、手を取って走り出した。

泣いたあとは誇りに思ってな、自分のこと。