ハラハラ �� ページ33
Side purple
「おま、どないしてん！なんやねんそれ！」
「ヒナちゃんうるさい！」
ある日の楽屋。Aの腕にはでっかいアザがあった。
顔をしかめる他のメンバー。こいつがなんぼ鈍臭い言うてもやで？今までこんなことはなかった…いや、あったか。
「回転扉あったんやけど、一緒に入ってくれる人おらへんくて。チャレンジしたらこうなった」
「お前の生活圏内にある回転扉、ぜんぶ変えろ言うんか！」
「ヒナやったら金あるしいけるやろ」
「Aのために変えたってや」
…なんて、その場は収まった。でも、それから立て続けにアザを作ってきては、聞いてへんのに理由を述べて。みんながいよいよ「おかしい」て確信した頃やった。
「…さっき聞いてもうたんよ。スタッフさんが話してるん」
マルが扉越しに聞いた会話は、決して許されるもんではなくて。わざと機材当てたり、コーヒーかけたり。…Aが不自然にケガしてくるほんまの理由を、決定付けたもんやった。
しかも一人ちゃうんかい。せっこいのお。
「おはようございます〜」
そこへやってきたAの手は、真っ赤になっとって。「何してんねん！」て亮の声に、「カフェラテ倒してもうた〜」って。…もう、我慢ならんわ。
「お前、ちょおこっち来い」
「え」
「村上くん、本人連れて行くん？」
「おー、間接的に解決しても納得いかへん」
「なんかあったら呼べよ」
「ん」
キョトン、としてるAの手を引いて、マルから聞いたスタッフの元へ一直線。途中で気づいたんか、「なんともない」やら「大丈夫」やら言い出すAを強引に引き止めて
「いきなりすんません。…ウチの、えらい可愛がってもろてるみたいで」
分かりやすく動揺するスタッフと、俺の背中におるA。地位やら立場やら、そんなもん関係あらへん。
「貴方らが思ってるよりもこいつ、強いんですわ。えらい舐めてたみたいですけど。まだなんかしようもんなら事務所のチカラ使いますけど、どうします？」
「す、すみませんでした…」
「俺に言うたかてしゃーないやろ」
背中におったAを隣へ立たせる。もうスタッフは半泣き状態で、ひたすら謝っとった。
「…もうええですって。ただ、他のメンバーにしようもんなら、ちゃんと責任とってもらってました。…ほんなら、これからもよろしくお願いします」
って言うから頭撫でたら「ありがとう」て。お前の強さやっちゅーねん。
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作者名：petrichor | 作成日時：2020年3月9日 11時
