名も無き陰陽師【過去編】 ページ6
少年はギラギラとその瞳を光らせ、黎磨を睨みあげている。
しかし、その瞳はどことなく悲哀の色を孕んでいて黎磨は思わず眉を寄せた。
その時だった、自分を呼ぶ声と共に民衆から上がるざわめき。
「何をしているのだ!黎磨!!」
「あ。晴明様」
くるりと振り返ったそこには、貴族との密談を終えたであろう清明と兄の道磨の姿があった。
「せ、晴明殿!!」
「私の弟子が迷惑をかけたようだ。」
役人が思わず叫んだ名に、少年は今まで黎磨に向けていた瞳を見開いて、即座にそれを晴明へと移す。
ニヤリと口角を上げ、少年のその口から紡がれた言葉は
「...帝の犬めが」
帝に仕える身でもある清明を非難するものだった。
「口を慎め!!!」
役人が少年の首を繋ぐ縄を引き上げれば、苦しそうに呻く。
晴明はその姿に思わず、やめなさい!と声を張り上げた。
「...その者の鎮魂の儀には私の弟子を伺わせます。それまではどうか穏やかに...。それでは。行くぞ黎磨」
晴明が絶たれゆく命に、慈悲をかけ踵を翻した。
そんな晴明の背中を少年は肩で息をしながらがら再び睨みあげる。
「...犬に情をかけられる筋合いはない。穏やかに。だと?戯言を吐きおって、吾を愚弄するか...貴様の顔、死しても忘れんぞ。」
その声を背に受けながら、晴明は道磨と未だそちらを振り返る黎磨を連れ
その場を後にした。
「鎮魂の儀は誰がやるのかな?」
「さぁな。俺達に話が無かったということは、兄弟子達の誰かだろう。」
「そっか。あの者は本当に罪人として殺されてしまうのかな?」
「五月蝿い。勉学の邪魔だ。少し黙れ」
晴明の屋敷に戻った兄弟の姿は自室にあった。
黎磨はあれからあの少年の事ばかり話してくる。道磨はそれに苛立ちながらも目は書物の文字を追っていた。
「あの者は、本当に罪人なのかな?私にはそうは見えなかったが...」
「...いい加減にしろ!!」
あまりのくどさに、道磨は声を張り上げた。
それに驚いた黎磨は驚き目を見開いてそちらに振り返る。
「帝が罪人だと云えば、罪人なのだ!!お前の言っていることは帝のご意思を否定するも同じだぞ!!」
「...そうか。なら私も罪人だな」
ヘラりと笑った黎磨に、道磨は返す言葉が見当たらず口篭る。
「悪かったよ兄さん。僕は少し寝るね」
黎磨はそう言って立ち上がると、道磨を通り過ぎていった。
いつからだろうか。弟の独特な思想を理解出来なくなったのは...。
黎磨は拳を握りしめた。
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愛鬼 - いやー面白いです(≧~≦))ププッ!続き気になる! (2018年1月19日 20時) (レス) id: 9f180f1a5a (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - wakaさん» わぁあ!!お久しぶりです(`;ω;´)長らく失踪してましてすみません(><)ずっと待っていただいたと嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2017年5月24日 14時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
waka(プロフ) - ぼんさん、久しぶり...!!!この小説の、更新ずっと待ってました~…!!これからも更新頑張ってね!!応援してます...!!! (2017年5月23日 17時) (レス) id: 38ddde090e (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - ルキアさん» はじめまして!お返事遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッ嬉しいお言葉ありがとうございます^^*これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» お久しぶりですー!コメントありがとうございますm(_ _)mそして返信が遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッなんだかんだでかなりまったり更新で申し訳ないです(´・ω・`)これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぼん | 作成日時:2015年12月2日 1時