名も無き陰陽師【過去編】 ページ5
ざわざわとしたざわめきは耳に入るものの、何を話しているかまでは黎磨には理解出来なかった。
もう少し近寄れば...と河原へ向かい一歩を踏み出せば、それを止めたのは道磨。
道磨は、至って冷静な顔つきで首を横に振った。
「やめておけ。あれは今から処刑される罪人だ」
「罪人...」
「この間。内裏護衛の役人に聞いたんだ。...何でも土蜘蛛の残党だとか」
「つちぐも...って頼光殿が仕留めたあの蜘蛛の妖の事かい?」
黎磨が問えば道磨は、間違ってはいない...とため息混じりに答えた。
「確かに土蜘蛛は頼光殿が仕留めた。が、その土蜘蛛も元を辿れば人間の怨念だったということだ」
「?」
「お前は本当に物分りが悪い奴だな。独自の屁理屈を吐く前に世を知れ。古来より朝廷に盾突く土着の豪傑を土蜘蛛と呼んでいたんだ。あの巨大な蜘蛛は討伐された代々の土蜘蛛達の怨念が作り出した怪。」
「...そうなのか」
黎磨は道磨の話に相槌を打ちつつ、未だ視線にその光景を焼き付ける。
人々に囲まれたその中心。全身を縄で括られ、死を連想させる死装束の白が瞳に揺れる。
遠くからで定かではないが、黎磨には自分と同じ齢ほどの人物に見えた。
気づけば黎磨の足は再びそちらへ向かって歩み始めていて
止める道磨の声が遠くに聞こえる。
河原の石をジャリジャリ音を立て踏みしめ、群がる人々をかき分ける。
そうして現れたのは、死装束を所々血で汚し
ぐったり項垂れる...やはり黎磨と同じ齢ほどの少年だった。
まるで犬のように首に縄を巻かれ、項垂れた頭を無理矢理起こされるその姿はとても痛ましいものだった。
「お、おい」
「ど、どこの坊ちゃんだ」
処刑人であろう役人も、黎磨の姿を見てどこぞの貴族の子と勘違いしたのだろう。
ずんずん罪人である少年に近づく黎磨を無下に止めることも出来ない。
「やぁ。私は黎磨という者だ。」
黎磨は事もあろうか、その少年に話しかけたのだ。これには役人もたまらず声を上げる。
「こ、困りますよ坊ちゃん。ささ。お帰りなさい。」
「そ、そうですよ。貴方のような高貴なお方が見るものではありません故に」
「私は君達が思っているような高貴な出ではない。元は孤児の忌み子だ。気にするな」
「な、何を仰られる...」
困惑する役人など目もくれず、黎磨は少年に視線を合わせるようにして膝をつく。
すると少年が閉じていた瞼を薄らと開いた。その瞳の色は美しい琥珀色で、それが黎磨を捉えるや否や憎悪に満ちる。
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愛鬼 - いやー面白いです(≧~≦))ププッ!続き気になる! (2018年1月19日 20時) (レス) id: 9f180f1a5a (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - wakaさん» わぁあ!!お久しぶりです(`;ω;´)長らく失踪してましてすみません(><)ずっと待っていただいたと嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2017年5月24日 14時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
waka(プロフ) - ぼんさん、久しぶり...!!!この小説の、更新ずっと待ってました~…!!これからも更新頑張ってね!!応援してます...!!! (2017年5月23日 17時) (レス) id: 38ddde090e (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - ルキアさん» はじめまして!お返事遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッ嬉しいお言葉ありがとうございます^^*これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» お久しぶりですー!コメントありがとうございますm(_ _)mそして返信が遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッなんだかんだでかなりまったり更新で申し訳ないです(´・ω・`)これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぼん | 作成日時:2015年12月2日 1時