【妖怪ウォッチ】シャーマン少女と本家大将大ガマさん。part５

名も無き陰陽師【過去編】 ページ35

「俺はこんな不味いもの食えない」

道磨の言葉に八十女は目を見開いた。コイツは一体何を言っているんだ？
あまりにも解せないその言葉に、ただならぬ恐怖を覚える。

「な、何を言って」

「だァかァらァア！！こんなもんよりうめぇモンがあるだろって話だよ！！！」


それは一瞬の出来事だった。
道磨は戦慄する八十女に一気に間合いを詰めたのだ。ダァン！と鈍い音をたて壁に押し付けられた八十女は小さく呻いた。
道磨の腕でギリギリと首元を押さえつけられる。それは到底、少年の力ではなかった。
動こうにも動けない状態で、八十女が目にしたのは……。

道磨の背後に揺れる影。それは徐々に形を作り巨大な鬼となった。

「よぉー。やっと話せるな蜘蛛のボウズ」

「っ！？」

ノイズがかった低い声。それは道磨の口と背後の鬼の口から発せられていて重複し響き渡る。
この世のものとは思えない恐ろしい形相に、八十女はガチガチと歯を震わせた。

「……き、さ。まは……！」

途絶え、途絶えに八十女が口を開けば目の前の鬼はガハガハと豪快に笑った。

「俺？俺は酒呑童子っつうもんだ！まぁ末永ァく宜しく」

「な、ぜ。れい、まの兄に……」

「んー？れいまのあに？……あぁ！コイツは俺のご主人様。俺達は深ァい絆で結ばれてんのよ」

八十女に顔を近づけ、にぃっと笑った道磨の顔は鬼そのもので八十女は小さく悲鳴をあげるのと同時にその瞳から涙が溢れ出す。
それを見た鬼と道磨はゲラゲラと笑った。

「さぁて蜘蛛のボウズ。俺はせっかちでねぇ。物事はさっさと進めたい。」

「な、にを」

「俺とご主人様。そしてお前……。俺達でこの世界をひっくり返してやろうじゃねぇか！お前を化け物呼ばわりするこの世界をお前の手でぶっ壊したくねぇか？」

八十女は目を見開いた。今この目の前に居る者達は自分を仲間に引き込もうとしているのだ。
化け物呼ばわりするこの世界。正直八十女はこの国そして世界が好きとは言えない。
それは幼い頃より土蜘蛛八十女としての教育を叩き込まれた彼の根本的部分とも言える。

「憎いだろ？悔しいだろ？だからぶっ壊してやれよ！！今なら出来る。それが出来るんだよ！！」

「っ、ぐ」

「なぁ土蜘蛛、仲良くしようぜ？同じ人間……源頼光にぶっ殺された者同士よぉ！！」

そう言って道磨と酒呑童子に、八十女はその琥珀色をギッと向け彼らを睨みあげた。

「いや、だ。吾は、……そんな事、知らぬ！」

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している


←名も無き陰陽師【過去編】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す