名も無き陰陽師【過去編】 ページ32
月に二、三度程。晴明は自ら夜の都へと足を運んでいた。ひとたび貴族が住まう領地を出れば、そこは魑魅魍魎達の無法地帯が広がっている。
百鬼夜行はここから始まり、都へとやってくるのだ。
それもこれも浮かばれない魂が異形へと姿を変えたが為の結果である事を晴明自身よく分かっている事だった。
異形になる前にその魂を鎮めてやれば良い。と晴明の独断で行っている儀式だ。
昼とは違い異形が力を増す夜は、危険も倍になる。
この儀式に携わる。ということは確実にその危険に対応できる力を持つという証。
「晴明様や、兄弟子たち。そして兄さんと共に、私もついに宵の儀についていける!」
「そうか。良かったではないか。だが、主の事だ。羽目を外して怪我等するなよ」
「なっ!……分かっているさ!そんな事!」
黎磨の目は明らかに期待で輝いていた。そんな黎磨に八十女はふと目を柔らかく細めると、空を見上げた。
「そうだ。夕餉は屋敷の侍女が運んでくると思うが……」
「?……なんだ?」
「も、もし。私達と同じ齢ほどの侍女…。ちっ、千代音が持ってくる事があれば……あまり話しかけるなよ!!」
「……何故だ?」
「な、何故って……。そ、それはだな」
「……成程な。主はその千代音とやらに、ほ…」
「わぁあ!!!そんなんじゃない!!惚れてる等とそんな事は…!!」
「ん?吾は惚れてる等と言ってはいないが?」
「あっ、なっ、……君はなんて意地の悪いヤツなんだ!!」
顔を真っ赤にして叫んだ黎磨に、八十女はプッと吹き出して大きな声で笑い出す。
黎磨はそんな八十女に未だ恥じらいが取れぬ赤ら顔を向けたまま、ケラケラと齢相当のあどけない彼の笑顔に安堵にも似たため息をつくのだった。
「え?行かない?」
「嗚呼。晴明様には申し立てた。宵の儀に俺は行かない」
部屋に戻った黎磨は、宵の儀に備え早めの夕餉を取ることにした。
しかしそこで気づいたのだ。共に宵の儀に向かうはずの兄、道磨が未だ書簡から目を離さない。夕餉を取らないのかと黎磨が聞けば、道磨は視線を向けることなくそう返した。
「珍しいな。兄さんが宵の儀を自ら断るだなんて」
「……少々気乗りしなくてな。気分も優れぬ事だ。次の機会に見送る事にしたよ」
淡々と答える道磨に、黎磨はそっか。とだけ返した後で再び口を開く。
「……やっぱりどこか調子が悪いのかい?」
黎磨の言葉に、道磨の眉がピクリと上がった。
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愛鬼 - いやー面白いです(≧~≦))ププッ!続き気になる! (2018年1月19日 20時) (レス) id: 9f180f1a5a (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - wakaさん» わぁあ!!お久しぶりです(`;ω;´)長らく失踪してましてすみません(><)ずっと待っていただいたと嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2017年5月24日 14時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
waka(プロフ) - ぼんさん、久しぶり...!!!この小説の、更新ずっと待ってました~…!!これからも更新頑張ってね!!応援してます...!!! (2017年5月23日 17時) (レス) id: 38ddde090e (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - ルキアさん» はじめまして!お返事遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッ嬉しいお言葉ありがとうございます^^*これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» お久しぶりですー!コメントありがとうございますm(_ _)mそして返信が遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッなんだかんだでかなりまったり更新で申し訳ないです(´・ω・`)これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぼん | 作成日時:2015年12月2日 1時