【妖怪ウォッチ】シャーマン少女と本家大将大ガマさん。part５

名も無き陰陽師【過去編】 ページ29

黎磨はそう言うと、一呼吸置いて眉を下げたあとけろりと笑うのだ。

「だが、私には無理だ。きっと君を殺すなんて事出来やしない。はは、何とも格好のつかない話だな」

「……」

「ならば共生の道を探すまで。私は知っての通り陰陽師の端くれだ！人であろうがそうでなかろうが……そんなことは大した問題じゃない」

ニッと歯を見せ笑った黎磨に、少年はユルユルと彼の胸ぐらを掴む力を弱くした。

「……吾は、どうして良いのか分からぬのだ」

少年は俯いたままで唇を噛み締める。つぷりと唇の皮が裂けそこからは赤い鮮血が細い筋を顎にかけて描いていった。
しかしその傷跡は、まるで最初から無かったもののように消え去るのだ。

「吾は人だ。そして、これからもこの先も……吾は人として生き、人として死にたい。……分かっておるのだ。それがもう無理な望みなのだという事位」

「……」

「……吾は何者だ？人か鬼か化物か…？喉を突けば痛みは走る、鮮血が身を汚す、飢えに喘ぐ事も、こうして得体の知れぬ感情に支配される事も……だのに何故死だけは吾を拒むのだ。」

ぽろ、ぽろ。と少年の瞳からは大粒の涙が溢れ出す。
潤んだ琥珀色が黎磨を映しては揺れた。

「生きたい。吾は生きたいのだ……けれど、生きて死にたいのだ。然しそれが、叶わぬ夢となってしまった今。吾は自分が何者かも分からずただただ化物へと成り果てるのかと思うと……とても恐ろしい。」

「……君は。もっと沢山の事を知る権利がある。その為には生きて様々な世界を見つめ、知り、そして聞くことにあると思うんだ。」

少年は、ニコリと微笑んだ黎磨に目を見開いた。

「……閻羅王に無理に会えとは言わない。ただ閻羅王の答えとやらを聞いてみても君にとっては一つの選択になると思う。道は一つではないんだ。寄り道だって悪い事じゃないはず」

「……」

「だから、独りで怯えるのは止めよう。独りで考えるのも止めよう。……そんな時のための友じゃないか！私だって君に相談したいこと、話したいこと…沢山あるんだ。お互い様って奴さ」

「……黎、磨」

「ははっ、偉そうな事を言ってしまったが私も君と同じで無知な童だ。一緒に学ぶのも悪くない事だと思わないか？……というか、君。今初めて私の事を名前で呼んでくれたね？ふふっ、嬉しいなぁ！」

ヘラりとそう言って笑った黎磨に、少年は顔を真っ赤にして慌てふためく。

名も無き陰陽師【過去編】※グロ注意→←名も無き陰陽師【過去編】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す