名も無き陰陽師【過去編】 ページ26
それから少年は再び心を閉ざした。
黎磨はいつもと同じよう彼の元を訪れたが、彼は頑なに黎磨を拒むばかりで、食事を持って行けば突き返され、話をしようと口を開けば無言で睨まれる。
ここ数日ろくにものを口にしようとしない少年は、みるみるうちに痩せ細っていた。
「何が最良かを定めるのは、貴様でもなく、閻羅王でもない。吾自身だ。吾は死を最良の道と思っておる。それ以上は何も無い」
少年が放った自身の最良は、黎磨が思う最良とは正反対のものだった。
彼は死を望んでいる。化け物になり果てる前に、人間である内に…。
「……私は、偽善者か」
黎磨は今日も突き返された膳に視線を向けたまま呟いた。
「黎磨」
「あ、晴明様……」
そんな黎磨を呼んだのは、師である晴明だった。
晴明は、黎磨が持つ膳に視線を向けた後で再び項垂れる黎磨に視線を戻す。
「今日もまた、要らぬと申したか」
「……はい。……私が悪いのです。彼を傷つけてしまった。晴明様。私は分かりません。生きていてもらいたいと思うのは私の偽善でしょうか」
「偽善かどうかと聞かれたら、私には答えることが出来ない。ただ、そう思う黎磨を私は間違っていると思わない。」
「……」
「膳をお貸しなさい。別の者に運ばせよう。」
晴明は優しく微笑むと、黎磨が持つ膳を受け取った。
「……そうだ、黎磨。話は変わるが……」
「……はい。なんでしょうか」
「道磨の事なのだが……」
晴明は少し言いにくそうに間を空けたあと、眉根を寄せて事を話す。
「ここの所、道磨の様子がおかしいのだが」
「兄さんの……ですか?でも、特に変わった様子等は見受けないように思いますが」
「……読めぬのだ」
「え?」
晴明が話した道磨の異変。それは、道磨に晴明術の一切が効かなくなったのだ。
ここの所の道磨の様子に不穏なものを感じ取った晴明は自身の術で道磨を読み取る事にした。が、しかし。その晴明の術はいとも簡単に跳ね返されてしまったのだという。
それはまるで、道磨以外の何者かが侵入を拒み排除するかのように。
「……何者かの……それも私以上の力の持ち主の呪詛により身固めされている可能性が高い」
「兄さんが……?!」
その時黎磨はハッとした。それはあの日の部屋でのこと……。
誰かと会話するかのようにブツブツと呟く道磨の声。そして、顔は恐ろしい程にやつれ顔色は悪く……何より半開きの口から見えた牙。
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愛鬼 - いやー面白いです(≧~≦))ププッ!続き気になる! (2018年1月19日 20時) (レス) id: 9f180f1a5a (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - wakaさん» わぁあ!!お久しぶりです(`;ω;´)長らく失踪してましてすみません(><)ずっと待っていただいたと嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2017年5月24日 14時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
waka(プロフ) - ぼんさん、久しぶり...!!!この小説の、更新ずっと待ってました~…!!これからも更新頑張ってね!!応援してます...!!! (2017年5月23日 17時) (レス) id: 38ddde090e (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - ルキアさん» はじめまして!お返事遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッ嬉しいお言葉ありがとうございます^^*これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» お久しぶりですー!コメントありがとうございますm(_ _)mそして返信が遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッなんだかんだでかなりまったり更新で申し訳ないです(´・ω・`)これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぼん | 作成日時:2015年12月2日 1時