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名も無き陰陽師【過去編】 ページ24

「いいか?蹴鞠というのはだな」

「……蹴鞠くらい知っておる」

相も変わらず黎磨は少年の元へと通った。
三食の配膳は勿論。それに付け加え都での遊びを教えては、それを共に楽しもうと何かしら持ってくる。

最初こそ、関わり合いを拒絶していた少年だったが…
あまりにも話を聞かない黎磨に諦めたのか…徐々に距離を縮めていった。

「なぁ、相談をしても良いか」

「……吾にか?……よせ。貴様の望む答えなど持ち合わせておらぬ」

「別に答えが欲しい訳では無いんだ。ただ、君に聞いて欲しい」

「……」

黎磨は困ったように笑った後で、持っていた鞠を真上へと投げる。
ポスッと再び手の中へ収まった鞠を眺め、その視線を空へと向けた。

「例えばだ。この世の中は今でこそ人の世だが……この世の中は人以外にも沢山の命が息吹いているだろう?」

「……」

「私は思うのだ。それぞれの命に世がある…。人にも、動物にも、虫にも、植物にも。……そして妖にも」

そこで少年は目を見開いた。
そしてゆっくりと、黎磨を見やったのだ。

「……晴明様が、君を閻羅王に会わせると仰っていた。閻羅王は心お優しいお方だ、君の行くべき道を必ずや開いてくれる。と」

「……」

「閻羅王は妖の世の長。そして全てだ……きっと」

「吾に、真の化け物になれと申すのか?」

ピシャリ。と放たれた言葉に黎磨の言葉は遮られた。
瞳を伏せて、そうして向けた視線の先の少年は…
形容し難い表情でこちらを見ていたのだ。
悲壮とも、憤慨とも取れる……そんな表情だった。

「そうじゃないんだ。晴明様は」

「妖には妖の世があると申したな。つまりは吾は閻羅王の元で真の化物としての道を歩めと?」

「そうは言っていない。ただ君は」

「フッ、そう言ってるも同じではないか。やはり貴様は都の陰陽師…。所詮は帝の犬という訳か」

「……っ!……違う!!このままでは君はいずれ理性のない化物へと成り果ててしまう!!今君の中には妖と人が共生をしている状態なんだ!その状態は長くは持たない……。だから!!」

「なら吾は死を選ぼう。今すぐここで吾を殺せ。吾がまだ僅かな人間を持つうちに……。帝の犬なら簡単であろう」

黎磨はそれ以上口を開かなかった。何故ならば少年の目が哀しく揺れていたから。
その色はあまりに悲哀で、黎磨は初めて後悔した。

自分は、この少年を深く傷つけたのだと。

さぁっと風が鳴く。
黎磨は唇を噛み締め、俯いた。

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設定タグ:妖怪ウォッチ , 過去編 , 捏造   
作品ジャンル:アニメ
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愛鬼 - いやー面白いです(≧~≦))ププッ!続き気になる! (2018年1月19日 20時) (レス) id: 9f180f1a5a (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - wakaさん» わぁあ!!お久しぶりです(`;ω;´)長らく失踪してましてすみません(><)ずっと待っていただいたと嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2017年5月24日 14時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
waka(プロフ) - ぼんさん、久しぶり...!!!この小説の、更新ずっと待ってました~…!!これからも更新頑張ってね!!応援してます...!!! (2017年5月23日 17時) (レス) id: 38ddde090e (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - ルキアさん» はじめまして!お返事遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッ嬉しいお言葉ありがとうございます^^*これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» お久しぶりですー!コメントありがとうございますm(_ _)mそして返信が遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッなんだかんだでかなりまったり更新で申し訳ないです(´・ω・`)これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぼん | 作成日時:2015年12月2日 1時

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