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名も無き陰陽師【過去編】 ページ22

晴明様が、半妖…。

どくんと道磨の心臓が、まるで捻られたかのように脈打った。

大学寮から帰った道磨は自室にて、更に学に励んでいた。
そんな道磨がふと、外を見れば眩しい程の晴天。たまには気分を変えて庭園を散策するのも悪くない。と
道磨は庭先へと出たのである。

晴明の屋敷は広い。
それ故に、庭園も中々の広さを誇る。
まだ花をつけていない木々たちを仰ぎながら、しばし散策を楽しんだ道磨の目に飛び込んできたのは黎磨と晴明の姿であった。
声をかけようと思ったが、彼の第六感がざわついた。
何故か声をかけてはいけない気がして、少々気は進まぬが立ち聞きをする事にしたのだ。

「私には少しばかり秘密がある。黎磨…主にだけに話してやろう。」

「晴明様の、秘密?」

「ああ。…私はあの童子と同じ半妖だ。否、半妖だったという言い方が正しいか…」


聞こえてきた会話は、耳を疑うものであった。
晴明が半妖。
それは、慕っていた師に…自分が憎む異形の血が流れているという事だ。

それから道磨は、無心になって話の行く末を辿る。
結果晴明が口にしたのは、あの少年の延命だった。


「そんな、うそだ…」

道磨が声を発せたのは、二人がその場を去ってしばらくした頃の事。
整わない呼吸をしまい込むように、口元に手を当てズルズルとその場にへたり込む。

道磨にとって異形は絶対悪であった。
それは母を異形に殺された事により始まったものだが、晴明の弟子として異形と対峙する度強くなっていった。

この世は人の世だ。他人の畑で悪さをする異形は害虫と同じ。
人の世を守るためには、駆除しなくてはならない。

いつしか道磨の中でかがげられたものは、偏った絶対正義だった。

「落ち着け、落ち着くのだ…」

口元を抑える手がカタカタと小さく震える。
自分に言い聞かせるように、そう呟いた道磨に沸き起こるのは形容し難い感情ばかりだった。

自分は人の為、都のため…絶対正義を掲げているのだ。なのに、片割れである弟は異形との共存を叫んでいる。
あの少年の事も、何もかも。
自分は危険と判断し、案を唱えたというのに
尊敬する師は首を縦にふろうとはしなかった。

それもその筈。なにせ、その師も片足を異形の世に踏み入れたような存在なのだから…。

そんな師は、自分の重大な秘密を…敢えて片割れである弟にだけ話した。

「…はは。」

道磨の口から、乾いた笑いがこぼれ落ちた。

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設定タグ:妖怪ウォッチ , 過去編 , 捏造   
作品ジャンル:アニメ
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愛鬼 - いやー面白いです(≧~≦))ププッ!続き気になる! (2018年1月19日 20時) (レス) id: 9f180f1a5a (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - wakaさん» わぁあ!!お久しぶりです(`;ω;´)長らく失踪してましてすみません(><)ずっと待っていただいたと嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2017年5月24日 14時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
waka(プロフ) - ぼんさん、久しぶり...!!!この小説の、更新ずっと待ってました~…!!これからも更新頑張ってね!!応援してます...!!! (2017年5月23日 17時) (レス) id: 38ddde090e (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - ルキアさん» はじめまして!お返事遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッ嬉しいお言葉ありがとうございます^^*これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» お久しぶりですー!コメントありがとうございますm(_ _)mそして返信が遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッなんだかんだでかなりまったり更新で申し訳ないです(´・ω・`)これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぼん | 作成日時:2015年12月2日 1時

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