【妖怪ウォッチ】シャーマン少女と本家大将大ガマさん。part５

名も無き陰陽師【過去編】 ページ3

「成程。」

「そうなのじゃ。あれは絶対物の怪の仕業にごじゃる。晴明殿のお力をお借りたい」

その日は麗らかな日和だった。手入れされた日本庭園に、豪華な屋敷。
ここは有力貴族の別宅だ。応接の間で、晴明そしてその後には道磨と、黎麿の姿があった。
清明に泣きついてきた貴族の依頼は、別宅に住まわす第二夫人。つまりは妾の事だった。
数日前。数人の家来。そして妾で行楽に出た時、妾が誤って道端の祠のようなものを倒してしまったという。
家来が丁重にお直ししたが
その夜。妾は獣のように四足で這い回り、ダラダラと涎を垂らしながら呻き声を上げるようになったという。
その豹変は丑三つ時になると起こるらしく、その証拠に貴族の隣に座る現在の当人はさめざめと泣くだけのか弱い女性だ。

「ふむ。承知致しました。今宵またこちらに伺うことにします。それまでにそちらで用意して貰いたいものが幾つかありますので...。」

清明は貴族にそれらを伝えると、道磨、黎麿に席を外すよう伝える。

屋敷を先に出た兄弟は、清明を待つがてら屋敷周辺を散歩することにした。
歩けど歩けど有力貴族の屋敷を囲む塀は続く。

「晴明様は何をお話になっていらっしゃるんだろう」

「それは、俺らが詮索する事ではない。それよりも黎磨。今宵の儀はヘマをするなよ」

「はは、分かってるさ兄さん。それにしてもあの貴族のオッサン。ぷくぷくと肥えていたな。まるで豚だ」

「黎磨！！口を慎め！」

「あはは！兄さんだって思ってるくせにッ。あれだけ太ったのは毎日贅沢してる証拠だ。この無駄にでかい豚小屋のすぐ向こうには飢えた民がいるというのに」

黎磨は散歩する足をふと止めると、じっとある方向に視線を向けた。
そこには、粗末な蓙にガリガリにやせ細った体を横たえる乞食の姿。
京の都では珍しくない光景だ。黎磨はそちらへ歩みを進めると、その乞食の前へ膝をつき先程貴族の屋敷で出された菓子を置く。
乞食はヒューヒューとか細い呼吸を繰り返し、目を見開いた。

「黎磨。お前のしていることは偽善に過ぎない」

「...」

「あの乞食は時期に死ぬ。飢えをしのげたとして、あの者に歩く余力なんてないのはお前も分かっている事だ。どちらにせよ貴族の家来に殺されて畜生の死体と同じように捨てられるのがオチだろう」

「...そうだね。私のしていることは偽善だ」

再び散歩再開させた黎磨に道磨が説く。
黎磨は瞳を伏せて、道磨の意見に同意した。

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