名も無き陰陽師【過去編】 ページ20
「晴明様は…」
「ん?なんだ?」
「閻羅王に会った事があるんですか?」
黎磨の質問は素朴なものだった。
その質問に、晴明はクスリと笑った後首を縦に振ったのだった。
「閻羅王には、私がまだ幼き頃…とても世話になったのだよ。あの方は私の恩人でもある…だからこそあの童子の事を頼みたいのだ」
私と同じ、あの童子の事を。
晴明の言葉に、黎磨は目を丸くした。
晴明と、あの少年が同じ。それは一体何を意味するのか。
黎磨の思考を読み取ったのか、晴明は静かに語り出した。
「私には少しばかり秘密がある。黎磨…主にだけに話してやろう。」
「晴明様の、秘密?」
「ああ。…私はあの童子と同じ半妖だ。否、半妖だったという言い方が正しいか…」
それは黎磨に衝撃を走らせた。
晴明が、混血の子だったという事実に返す言葉がなくなった。
「私の母は葛の葉という狐の妖だ。人間の父が妖の母を助けたのが馴れ初めだと聞いた…。そうして恋仲になった父と母の元に産まれたのが私だった」
晴明は懐かしむように目を細めた後で、その後を続けた。
母葛の葉、そして父保名の間に産まれた晴明は父と母の愛情を一身に受けすくすくと育った。
しかし、晴明が五つの歳を迎えた頃。
突如、母である葛の葉が姿を消したのだ。
父に問いたが、葛の葉は死んだと言うばかりで
その日以来、母の話をしなくなった。
そんな時。晴明は住んでいた村の人々から父諸共迫害を受ける。
元々、不思議な力があった晴明は村人から気味悪がられていたが
その矛先は父にまで向けられていたのだ。
狐の子、異形の一族、厄の象徴。
晴明と、父は追い出されるようにその村を後にしたという。
そして、晴明は知ったのだ。
母が妖という事を。
父保名に助けられた葛の葉は、恩返しの為に人間に化け、保名の身の回りの世話をするようになりいつしか彼と恋仲になった。
つまりは父も初めこそ、葛の葉が自分が助けた妖。という事に気づいていなかったのだ。
葛の葉が自分達の元を去ったのは、彼女の正体が保名に知られてしまったから…。
保名は、それでも共に居たいと懇願したが
葛の葉は首を縦に振ろうとはせず…幼い晴明を保名に託し姿を消したのだという。
それを聞いた晴明は、幼いながら歓喜した。
母は死んでいない。また会えるかもしれない。と…。
「しかし、母は何処にも居なかったよ。毎日名を呼んで、泣き叫び…会いたいと懇願しても…。母が私の前に現れることは無かった…。」
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愛鬼 - いやー面白いです(≧~≦))ププッ!続き気になる! (2018年1月19日 20時) (レス) id: 9f180f1a5a (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - wakaさん» わぁあ!!お久しぶりです(`;ω;´)長らく失踪してましてすみません(><)ずっと待っていただいたと嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2017年5月24日 14時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
waka(プロフ) - ぼんさん、久しぶり...!!!この小説の、更新ずっと待ってました~…!!これからも更新頑張ってね!!応援してます...!!! (2017年5月23日 17時) (レス) id: 38ddde090e (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - ルキアさん» はじめまして!お返事遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッ嬉しいお言葉ありがとうございます^^*これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» お久しぶりですー!コメントありがとうございますm(_ _)mそして返信が遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッなんだかんだでかなりまったり更新で申し訳ないです(´・ω・`)これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぼん | 作成日時:2015年12月2日 1時