名も無き陰陽師【過去編】 ページ18
少年は言いにくそうに濁しながらそう言って、その瞳を伏せる。
そんな少年に黎磨はキョトンとした後。フフッと笑う。
「君の事で恐れていたら、陰陽師の弟子なんて務まらないさ!そんな事より」
「そ、そんな事より!?」
「そんな事より君の名が知りたい!そろそろ教えてくれてもいいと思うんだが…」
ダメかい?と目を細めた黎磨に、少年は暫くして口を開いた。
「…吾の名は、…八十女」
「…やそ、め?」
少年が黎磨に告げた名は、少年の母の名である筈の八十女という名だった。
「えっと、それは…」
君の母君の名では?と聞きかけた黎磨を遮ったのは、少年の自嘲気味な笑い声だった。
「八十女…まるで女の名だろう?…これは吾の母の名だ」
「…」
「母は、吾を産み落としたのと同時に命を落としたと聞く。顔も知らぬ母の名を吾が継いだ…」
少年は伏し目がちなその瞳をすっと黎磨に向ける。その表情は憂いを帯び、黎磨はそんな少年に真剣な眼差しを向けることしか出来なかった。
「ずっと考えていた…。吾は、一体何者なのかを。八十女の器でしかない吾の存在の意味を…。」
少年は自嘲気味な笑みを浮かべ、まるで全てを諦めたかのような声音でそう言った。
「捕らえられ、晒し者にされ…それでも存在意義の分からぬ人生の死というものに安堵した。しかし、吾は今生きているのだ。…そして知った。自分は化物だったのだと…。死ぬことも許されぬとは実に滑稽。笑い話もいいところだ。お前もそうは思わぬか?都の陰陽師よ」
「うーん。君の話は少し難しい。生憎私は出来が悪くてな!理解しかねる!」
「…なっ、」
「でもそんな出来の悪い私でも言えることは…君は君だ。他の何者でもない!そして、君は今生きているんだ。それ以上でも以下でもない」
違うか?
首をかしげ、逆に問われた少年は目を丸くした。それは少年にとって思いもよらない返答だったからだ。
「あ。それと私の名は黎磨だ。都の陰陽師ではない!」
「…」
「友には名で呼んでもらいたいものだな!」
「…友?」
「ああ。丁度齢も同じ頃だろう?」
ヘラヘラ笑う黎磨に、少年は更に目を丸くした。
友。という単語に今まで縁もゆかりもない少年にとって黎磨の思考は理解し易いものだった。
しかし、それと同時に
友と言う単語は、少年の心に深く染み渡り
生まれて初めて、むず痒くなるような感覚をもたらしたのだった。
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愛鬼 - いやー面白いです(≧~≦))ププッ!続き気になる! (2018年1月19日 20時) (レス) id: 9f180f1a5a (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - wakaさん» わぁあ!!お久しぶりです(`;ω;´)長らく失踪してましてすみません(><)ずっと待っていただいたと嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2017年5月24日 14時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
waka(プロフ) - ぼんさん、久しぶり...!!!この小説の、更新ずっと待ってました~…!!これからも更新頑張ってね!!応援してます...!!! (2017年5月23日 17時) (レス) id: 38ddde090e (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - ルキアさん» はじめまして!お返事遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッ嬉しいお言葉ありがとうございます^^*これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» お久しぶりですー!コメントありがとうございますm(_ _)mそして返信が遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッなんだかんだでかなりまったり更新で申し訳ないです(´・ω・`)これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぼん | 作成日時:2015年12月2日 1時