名も無き陰陽師【過去編】 ページ17
「…都に生きる民の暮し。ぶくぶく私腹を肥やす豚の暮しの事か」
黎磨は、道磨の言葉にそう返した。
瞬間飛んできたのは、道磨の掌。それは黎磨の頬をバチンと叩く。
「口を慎め。お前の発言は、帝を侮辱するも同じ事だぞ」
「人を人だと思わない豚の暮しを守って何になるんだ兄さん…。分かった。約束する…。彼が化物になった暁には…」
私が彼を殺そう。
低く呟かれた言葉と、決意を孕んだその眼差しに。道磨は背筋にゾクリとしたものを感じずには居られなかった。
この時ばかりは、血のつながった唯一の家族とは言え黎磨の事を自分とは違う何か。として見えてしまったのだ。
「黎磨、道磨。落ち着きなさい…。」
晴明の凛とした声で、二人は我に返った。
「双方の気持ちは良く分かる。道磨、主は真面目だ。故に都の未来をよく考えてくれての事だろう。黎磨。主は…己というものをよく分かっている。故にあの童子に重ねるものが多いのであろう」
「…」
晴明の言葉に、二人は俯いて唇を噛む。
相対する二つの思想は、陰と陽。噛み合う事は無い。
「一つの可能性として。の見解だ。私も対策を練ろう。今宵は遅い…もう休みなさい」
晴明の一言により、この日はそれぞれ自室に戻った。
それからも、黎磨の毎日の習慣は変わらず
少年にせっせと膳を運んでは他愛のない話を一方的に喋り続けた。
「今日も晴天だ。そう言えば、この間話した花のことなんだけど、今日見たら」
「…何故だ」
「…え?」
いつも通りの独り言に、返事が帰ってきたものだから黎磨は思わず間抜けな返事を返してしまった。
「何故だ。と聞いた」
「…」
少年はゆっくりと黎磨に視線を向けた。
琥珀色の瞳が、驚く黎磨を映し出す。
「吾の事は放っておけ。と言ったはずだ」
「…あははっ!」
「…なぜ笑う?」
「ごめんよっ…君がようやく話をしてくれて、驚いたのと同時に嬉しいんだ!」
「…」
ケラケラ笑う黎磨を少年はジト目で見つめ、小さくため息をついた。
暫くして、黎磨はそんな少年にニンマリと満足げな笑みを浮かべて見せる。
「…お前は暇なのか?毎度毎度…吾にかまけているが」
「ああ!暇だ!だから話し相手を探していたんだ」
「…」
黎磨の返答に少年は目を丸くした後、再びため息をついたのだった。
「…お前は吾が、恐ろしくないのか?」
「恐ろしい?何故だい?」
「…吾は…人を喰らった化物だ」
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愛鬼 - いやー面白いです(≧~≦))ププッ!続き気になる! (2018年1月19日 20時) (レス) id: 9f180f1a5a (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - wakaさん» わぁあ!!お久しぶりです(`;ω;´)長らく失踪してましてすみません(><)ずっと待っていただいたと嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2017年5月24日 14時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
waka(プロフ) - ぼんさん、久しぶり...!!!この小説の、更新ずっと待ってました~…!!これからも更新頑張ってね!!応援してます...!!! (2017年5月23日 17時) (レス) id: 38ddde090e (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - ルキアさん» はじめまして!お返事遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッ嬉しいお言葉ありがとうございます^^*これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» お久しぶりですー!コメントありがとうございますm(_ _)mそして返信が遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッなんだかんだでかなりまったり更新で申し訳ないです(´・ω・`)これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぼん | 作成日時:2015年12月2日 1時