名も無き陰陽師【過去編】 ページ13
半ば洗脳に近い教育の末。少年の不信感は飛躍し憎しみへと変わる。
世の為、人の為と。正義に近い感覚だった。
しかし、ある時ふと思い悩む事が少年にはあったのだ。
例えば、帝を倒したとして
この世は解毒されるのか。と。
人の数だけ、思想があり意思があり。それが皆疎通するかと聞かれたら少年は頷く事が出来なかったからだ。
自分達を含めた人間というものの存在がある限り...争いは、なくならないのかもしれない。
それは、八十女として生きた少年が初めて持った自分の意見であった。
勿論。そんな事を言えば、厳しい折檻が待ち受けていた。
顔が変形しようと、歯や骨が折れようと、深い傷を刻まれようと...その折檻は問答無用で少年を痛めつける。
酷い時は、折檻の後。三日三晩飲むことも食うことも許されず、母の墓のそばにある窖に幽閉された。
この時少年に芽生えた感情は、自分は一体何者か?というものだった。
一族の皆が慕ってくれるのは、八十女を演じる自分であって、自分自身ではないことを知った。
暗闇に支配される窖の中。少年は人というそのものに対して不信感を募らせた。それは行く行く、人に対しての憎しみへと変わった。
そんな時だった。一族が再び朝廷への謀反を計画する。しかし、それをいち早く嗅ぎつけた帝直下の兵隊が今度こそと言わんばかりに一族を根絶やしにした。
その時少年は一族首領、土蜘蛛八十女として捕らえられたのだ。
少年は憎んだ。憎んだが、心のどこかで安心していたのだ。
やっと死ねる。もう八十女を演じなくて良いのだと。
それは葛藤となって、ぐちゃぐちゃに混ざり合い。それから少年は考えることをやめた。
それなのに...
「何故だ、何故...吾は死んでいない」
死を望んだ、そして望む結果が来たと思った。
「吾は、一体何者だ...」
しかし、死は少年を許さなかった。
「吾は......化物に成り果てたと言うのか?」
ポロポロと少年の頬をぬらしたのは、大粒の涙だった。
それは止まることを知らずに、寝具すらもぬらしてゆく。
肌触りの良い絹の布団に顔を埋め、少年は声を殺して泣き続けた。
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愛鬼 - いやー面白いです(≧~≦))ププッ!続き気になる! (2018年1月19日 20時) (レス) id: 9f180f1a5a (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - wakaさん» わぁあ!!お久しぶりです(`;ω;´)長らく失踪してましてすみません(><)ずっと待っていただいたと嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2017年5月24日 14時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
waka(プロフ) - ぼんさん、久しぶり...!!!この小説の、更新ずっと待ってました~…!!これからも更新頑張ってね!!応援してます...!!! (2017年5月23日 17時) (レス) id: 38ddde090e (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - ルキアさん» はじめまして!お返事遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッ嬉しいお言葉ありがとうございます^^*これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» お久しぶりですー!コメントありがとうございますm(_ _)mそして返信が遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッなんだかんだでかなりまったり更新で申し訳ないです(´・ω・`)これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぼん | 作成日時:2015年12月2日 1時