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名も無き陰陽師【過去編】 ページ12

ニッと笑った黎磨だったが、少年は未だ彼を睨み続けている。
余程帝に仕える自分達を嫌っているようで、黎磨は眉を下げて
すまない。とだけ呟いた。

「よければ話して欲しいんだ。君のことを。私は君を悪い奴だとは思っていない。」

「...」

「と言われても、いきなりは信用出来ないよな。でもひとつ分かって欲しいのは、もう君を傷つける者は誰もいない」

「去れ」

「...」

「吾の事は...放っておけ」

少年はそんなに黎磨にそれだけを告げて、瞳を逸らした。しばらくの沈黙の後。黎磨は困ったように笑って、その場を去ったのだ。

黎磨が去った後。少年はしばらく俯いていた。
思い返したのは、ある夜の事。
自分が生まれ育った里が、壊滅した夜のことだった。

燃える家屋、飛ぶ火の粉。
悲鳴に断末魔。まだ幼い赤子の泣き声。
少年の耳に、目に、それは焼き付いて離れはしなかった。
帝が、朝廷が、この世が、憎い。

しかし、少年にはそれとは別に
またひとつの感情があった。

少年は自分の生い立ちを遡る。山奥に住む一族の首領の息子として生まれ落ちた。
少年の父は彼が生まれる前に死に、母もまた彼を産み落とし亡くなる。
その一族は代々女が収める女傑の一族。
そこに跡取りとして生まれたのが、少年であった。一族は彼が生まれたのと同時に命を落とした母であり首領の名、八十女を少年の名として授けた。
母の名を背負い、八十女として少年は今まで生きてきたのだ。

そんな少年の一族が土蜘蛛。と呼ばれていたのは遥か昔の事。
本来朝廷に順応しない土豪たちにつけられた蔑称だが、一族はその蔑称を誇りに思っていた。
自分たちは朝廷に反旗を翻す、土蜘蛛だ。と。
誇り高き土蜘蛛の名を掲げ、朝廷に戦いを挑んだが結果は分かりきったものでほぼ壊滅に追いやられた。
その時生き残った数名が、再び繁栄を果たし...。土蜘蛛の一族を復活させたのだ。

一族の民は少年が幼い頃より、朝廷が、帝が、如何に極悪非道な振る舞いをしてきたかを説き
少年はその教育の元、帝に対しての不信感を募らせてゆく。
現に、幼い頃一度だけ都に降りた少年が見たのは...痩せ細り、蛆や蝿のたかる民衆の屍を
まるでゴミのように捨てる役人達の姿。
飢えに苦しむ民衆を、虫螻を見る目で見下し助けようとはしない貴族の姿だった。

この世は腐っております。だからこそ我々土蜘蛛が変えねばならぬのです。

いつだったか、教育係でもあった婆が少年に言った言葉だった。

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設定タグ:妖怪ウォッチ , 過去編 , 捏造   
作品ジャンル:アニメ
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愛鬼 - いやー面白いです(≧~≦))ププッ!続き気になる! (2018年1月19日 20時) (レス) id: 9f180f1a5a (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - wakaさん» わぁあ!!お久しぶりです(`;ω;´)長らく失踪してましてすみません(><)ずっと待っていただいたと嬉しいお言葉ありがとうございます!これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2017年5月24日 14時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
waka(プロフ) - ぼんさん、久しぶり...!!!この小説の、更新ずっと待ってました~…!!これからも更新頑張ってね!!応援してます...!!! (2017年5月23日 17時) (レス) id: 38ddde090e (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - ルキアさん» はじめまして!お返事遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッ嬉しいお言葉ありがとうございます^^*これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» お久しぶりですー!コメントありがとうございますm(_ _)mそして返信が遅れてしまい申し訳ございません(´;ω;`)ブワッなんだかんだでかなりまったり更新で申し訳ないです(´・ω・`)これからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2016年4月30日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぼん | 作成日時:2015年12月2日 1時

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