【妖怪ウォッチ】シャーマン少女と本家大将大ガマさん。part５

名も無き陰陽師【過去編】 ページ2

それは遥か昔。時代は平安と呼ばれる頃。
京の都はまるで陰陽を描いたかのような場所であった。
美しい着物を纏い蹴鞠や舞などの娯楽を楽しむ貴族。それはそれは煌びやかで雅な世界。
かたや、飢餓や疫病。貧しさから人を殺め、飢えをしのぐために親をも喰らう
まるで地獄のような修羅の世界。
それが何の線引きもされず、同じ空間同じ時空に存在した。

そんな修羅の世界で日々生き、そして死んでいった者達の怨念が異形の者達を産むようになる。それは百鬼夜行とも呼ばれ人々から恐れられた。

妖、鬼、魍魎、怨霊...人ならざるものを、人ならざる力で制する者。
それが陰陽師と呼ばれる者達だった。

陰陽師は、その摩訶不思議な力を使い
都に蔓延る百鬼夜行を制したと伝えられる。


そんな平安の世に、とある集落があった。
名すら無い小さな集落であった。
その集落に、ある日男児の双子が生れ落ちる。

集落では双子を邪悪なものとし、双子を産んだその母親も双子の赤子も
忌物として扱われ、奥地へと隔離された。

そんなある日。集落を百鬼夜行が襲う。
異形の力に人間が勝てるはずもなく、あっという間に集落は火の海になった。
もちろん異形の魔の手は、奥地で暮らしていた母子にも伸び...
集落は全滅したかに見えた。

後日。その場を訪れた都の陰陽師が、とあるものを見つける。
それは奥地で暮らしていた双子。
腐乱した母親の死体に抱かれ、泣き叫ぶまだ幼い双子の姿だった。

あれだけの被害を被った場所で、無傷の双子を陰陽師は奇跡の子とし
その双子を自分の弟子とすることを決める。

陰陽師はその双子を都に連れて帰り、名をさずけた。

兄を道磨
弟を黎磨

陰陽師はその双子を、時に厳しく時に優しく。親代わりとなって育てる。
自分が得意とする陰陽道から、文学まで。
自分が持ち得る術を教え込んだ。

その陰陽師の名は安倍晴明。
後に大陰陽師と呼ばれ、陰陽頭となる男だ。

それから10年ほどの月日が流れた。
双子の齢はこの時１４。

双子は見た目こそ瓜二つだったが、その性格には決定的な違いがあった。
兄は真面目で努力家でもあるが、母の仇である
異形の者達を忌み嫌い復讐心を燃やしていた。
しかし、弟は何処か楽天的で型に嵌らず
時に異形の者達にも慈悲をかける程であった。

当然兄の道磨はそんな弟を良くは思わず...。兄弟間でそれなりの溝を生むことになる。

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