愛がなんだ (ページ4)

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兄妹ページ4

　

目の前の " 純喜 " という男は
この食事会をすんなりと受け入れているのか
ニコニコと笑顔を見せながら私を見つめた

「改めて、この子は娘のA。ほら、挨拶して」

「はじめまして…Aです」

「はははっ！百合さんと違って大人しいんやな！」

「そうなの。この子少し恥ずかしがり屋でね。純喜くん、Aの2つ上よね？こんな妹だけど可愛がってくれるかしら？」

「もちろんですよ！僕、ずっとひとりっ子だったんで妹ができて嬉しいです！よろしくな？Aちゃん！」

そう言って差し出された手を軽く握ると
強く握り返されぶんぶんと振られた

「まぁ、自己紹介はこんなもんにして。料理が冷めへんうちに食べながら話そか」

目の前には訳の分からない見た目の料理が置かれて
ナイフやらスプーンやらフォークがサイドに並んだ

みんなは自然に料理に手をつけ食べ始める

初めての光景に手に汗が滲んだ

これはどれを選んで食べれば良いのだろうか
この場で素直に質問したら母は確実に機嫌を損ねるだろう

恥をかかすな、と。

それにおじさんだって、これから娘になるのに
マナーのなっていないやつだって呆れるかもしれない

私はそっと目の前にいる兄(仮)を盗み見る

その瞬間ぱっと目が合ってしまった

慌てて目を逸らそうとすると、
彼は何も言わずに優しく微笑み、頷いた

「な、父さん。これって、どれで食べたらええんやった？こっちやったっけ？それともこれ？」

「お前なぁ、あれほどテーブルマナーの勉強しとけって言うたのに、これは両端から順に並べられてるんやで」

「あぁ〜！確かに！そうやったかも」

「そうやった" かも " じゃなくて、そうやって言ってるやん！ったくほんとにこいつはもう、どうしようもないわ笑」

「ふふふ、純喜くんって明るくて良い子ね」

「うわ、うっま！！これめっちゃ美味い！」

そう言って笑うと私に視線を移した

「Aちゃんも早く食べてみ？めっちゃ美味いから」

初めから私が食べ方を知らないのに気づいていたのだろう

ただの能天気だと思っていたのに
意外と周りを見ている人なのかもしれない

そう思うと、
きっと、この食事会もすんなり受け入れた訳ではなく、
場を乱したくなくて受け入れているフリをしたのでは？
と、少しだけ疑った

これから兄になる人の第一印象は
どこか掴みどころのない人

そんなとこだ

　