愛がなんだ (ページ13)

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発芽ページ13

　

「A！おはよ〜う」

玄関から外に出ると
純喜くんが手をぶんぶん振って私を待っていた

庭の桜の花びらがひらひらと舞い
純喜くんの頭の上に一枚落ちる

「私が迎えに行くことになるかと思ったのに」

「楽しみで早起きし過ぎた笑」

「実は私も楽しみで早起きしたの」

「あの部屋慣れた？」

「うん、純喜くんとの勉強会の時によく出入りしてたからすぐに慣れたよ。純喜くんはどう？」

「めちゃくちゃ寂しい。みんなのとこ行かんと喋り相手居ないから暇やし」

そう言って口を尖らす純喜くん

私たち親子がこの家に引っ越してきたと同時に
純喜くんの部屋が私の部屋になり、
純喜くんの部屋は敷地内の離れに移ったのだ

おじさんはこう言っていた。
純喜くんは大学受験が控えてるから
丁度良いタイミングだった、と

その部屋は芸術家だった純喜くんのお母さんが病気で亡くなるまで作業部屋として使っていた部屋らしく

純喜くんのお母さんの話を聞くことはなんとなく
家族内でタブーになっていたので純喜くんにこっそり教えてもらった

「暇なら私のとこにたくさん話に来てよ、私も純喜くんが居ないと暇だし。あ、私も純喜くんの部屋に遊びに行ってもいい？」

「ある程度片付いたから遊びに来てええで！母さんが残した作品も見せたいし、なんだかんだで居心地良いから絶対Aも気に入ると思う」

「やった。それなら今日学校が終わったら遊びに行っても良い？」

「あ〜、ごめんな、今日サッカー部で入学式の片付け任せられてんねん」

「そうなの？じゃあ一緒に帰れないの？」

「そうやな、いつ終わるか分からんし先帰ってた方が良いかも」

「え〜、入学式終わったら一緒に帰れると思ってたのに」

「母さんと一緒に帰ったらええやん。俺とはこれからいつでも一緒に帰れるし笑」

「そうだけど、今日は初めてだから特別だったのに」

「ごめんな？来週部活休みの時一緒に帰ろう。な？」

「分かった。約束ね？」

「おう、約束！」

そう言って純喜くんは私の髪をぐちゃぐちゃにして頭を撫でた

「あー！せっかく髪の毛整えたのに！いつもぐちゃぐちゃにするじゃん」

「ごめんって笑」

「もう…いいから早く行こ！白岩さん待ってるんじゃない？」

「うわ！そうやった、走ろ！」

私の住む世界が一変して
不安なこともたくさんあったけど
こうして純喜くんが笑ってくれると
全て上手く行く気がした
　
　