検索窓
今日:3 hit、昨日:10 hit、合計:25,615 hit

25話 心地よい温かさ ページ27

兎「俺もう、ほんとにビックリしたんだよ、急にAが倒れるから……」


『ごめんね…』


兎「Aが死んじゃうかと思って……」


目の前でわんこの如く、グスングスンと泣いているのは光太郎。


ほんとに笑ったと思ったら泣いて……感情の変化についていけない……


光太郎の頭を撫でながら慰めていると、落ち着いてきたのかいつもの元気が戻ってきた。


兎「でもA、ほんとによかったー!!思ったより回復早いんだな!!!」


『うん、たくさん寝たからね』


兎「そんなAちゃんには、ご褒美をあげよう!!!」


『わっ!!ちょ、こーたろ、』


兎「ホレ!!!」


勢いよく、私の頭をぐしゃぐしゃ撫で回す光太郎。


すっかりいつもの調子に戻った彼。笑いながら、大きな手で頭を撫でてくれる。


彼の笑みに引きつられ、私も笑った。


『こうたろ、もういいよ。ありがとう』


少し笑い疲れたため、彼の手を優しく頭から下ろし、そう言う。


一息つきながら、グシャグシャになった髪の毛を直す。


兎「……Aさ」


『ん?』


兎「えっと、あ、あのな、」


『うん、どうしたの?』


今度は、割と神妙な面持ちになった彼にそう問いかけると、光太郎は恐る恐る口を開く。


兎「…手、握ってもいい…?」


『え』


一瞬、息が止まった。


心臓は途端に速くなり、下からわんこのような顔で私を見つめる光太郎。


兎「だめ……?」


『っ…』


思えば私は、昔から光太郎のこの顔に弱かった。


物欲しそうな、捨てられたわんこみたいな眼差しが。


『………うん、いいよ』


兎「!」


手を光太郎に差し出す。


ゆっくりと差し出された光太郎の手が、私の手を握る。


ぎゅ、と少し力を入れて握られた。


『(…あったかいな)』


子供体温並の温かさ。クーラーの効いている部屋だから、余計に温かく感じる。


男性特有のゴツゴツとした大きな手は、私の手をあっという間に包み込んだ。


心臓はすごく五月蝿いのに、何だか心地よくて、懐かしくて。


そのぬくもりが、たまらなく愛おしくて。


兎「なぁ、A」


『…なに』


兎「俺…Aみたいに頭良くないし、バレーくらいしか出来ないけど」


『…』


兎「これからも俺のこと、見ててほしい」


握る力が強くなる。


真剣な眼差しにこもった熱が、私を捉える。


『…当たり前、でしょ』


そう言って彼の手を握り返すと、彼は満足そうに微笑んで、そしてもう片方の手も優しく包み込んだ。

26話 BBQ→←24話 熱中症!?



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.1/10 (89 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
138人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ななサマ - これは神作!キュンキュンしちゃいました!木兎さん推しとしてはこの設定は神。大好きです!! (2022年6月7日 22時) (レス) @page38 id: 3d9458003a (このIDを非表示/違反報告)
みづお - わー!ありがとうございますっ、頑張って更新します!! (2022年4月7日 15時) (レス) id: 4414ac7bc9 (このIDを非表示/違反報告)
aya - メッチャ面白かったです(*´ω`*)更新楽しみにしてますねっ!! (2022年4月6日 23時) (レス) @page29 id: 563d44d02c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みづお | 作成日時:2022年4月4日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。