生きた証を、この世界に［桃］

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手越が退院してから、初めて4人揃っての仕事の日。だからちょっと気が抜けちゃったのかな。




撮影の途中ぐらい。反対側に立ってる手越がフラフラし始めたのが目に入ったから、このショットが終わったら声かけようって思ってたんだけどね......




手越は多分、隣にいたまっすーの腕を掴もうとしたんだと思う。俺も咄嗟に駆け寄ったけど間に合わなかった。




「手越、っ！！！！」

「てごし、大丈夫？頭打ってない？」




鈍い音を立てて思いっきり後ろ向きに倒れた手越の顔は真っ青で、さらに不安になった。




「小山、水と毛布もらって来てくれる？まっすーは背中さすってやって」

「うん、......分かった、」




こういう時、シゲは頼もしい。スタッフさん達も突然のことにびっくりしてたけど、軽く事情を話せばすぐに動いてくれた。




必要なものを借りて戻ると、手越はグッタリ横たわってた。シゲが持ってる袋を見る限り結構吐いちゃったんだな......




「変に動かさない方がいいんだよね？」

「うん、多分かなり目眩すごいんだと思う......」




お医者さんに言われたのは、発作が起きたらまずは身体を起こして吐かせること。喉に詰まっちゃうと危ないからね。




で、吐き終わったら落ち着くまでは出来るだけ動かさずにその場に寝かせること。しばらく相当酷い目眩が続いちゃうみたい......




さっきまで笑ってたのに、汗と涙でぐちゃぐちゃになった手越は別人みたいに苦しそうだった。




「......はぁ、......はぁ、っ......うぅ.......っ、」

「まっすー、これ、毛布、」

「うん、ありがと。てごし、泣いたら苦しくなっちゃうよ。ゆっくり息しようね、」




結局そのあとも2時間ぐらい手越は起き上がれないまま嘔吐(えず)いてて、その間スタッフさんたちには謝罪と事情を話した。




手越が仕事をするためには、俺たちが病気のことを理解して助けてあげなきゃいけない。こうなることも分かった上で。




でも、もし手越が一人の時に発作が起きたら...... そう思ったら、一人にさせるのが急に怖くなった。




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