生きた証を、この世界に［桃］

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突然病気が見つかって、そうなった原因はあんまり分かんないまま退院した。




あの気持ち悪い発作もいつ起きるか不安で怖かったけど、病気が分かる前みたいに出来るだけ考えないようにした。




「手越、調子どう？」

「今のところ全然なんともないよ、ありがとう」




退院してすぐはみんな目の色変えて心配してくれたけど、思ってたより発作は起きない。




だから意外と大丈夫かも？なんて、またちょっとだけ油断してた。




「じゃあ、撮影始めます！スタンバイお願いしまーす！」




仕事もボチボチ再開して、4人の雑誌撮影に浮かれてたその日。違和感を感じたのは、撮影が始まってしばらくした頃。




それまでは順調だったのに、突然あの嫌な耳鳴りがするようになった。




最初はちっちゃい音でキーンって聞こえるぐらいだったからなるべく気にしないようにしてたけど、それがどんどん大きくなって。




あれ？って思ってからはあっという間。




目の前がサーって白く霞んで来て、見なきゃいけないカメラのレンズがどこにあるか分からない。




頭がふわふわして、胸のあたりが気持ち悪くなって来て、何かに捕まってなきゃ立てないと思った時にはもう遅かった。




咄嗟に誰かの腕を掴もうとした途端、頭の中がグルンってかき混ぜられるみたいに回転して、身体が打ち付けられる衝撃。




一瞬の暗闇が明けた時には、目の前に薄っすら地面が見えた。




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