透明ノ空 -2- (ページ29)

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72話『れっつ情報収集』*コトハページ29

「すいません、ちょーっとお時間いいですか？」

にっこりと、この場に合わない笑顔を貼り付けて、近くにいたおっさんに声をかける。

「あ？手前みてえな餓鬼にやる時間なんてねえよ」

サングラス越しに見えるその目は鋭くギラギラと光っていて、これぞマフィアの人。というオーラが丸出しだった。まあ、そんなもの俺には関係ないけれど。

「この男に関わる情報を全て教えてもらいたい。金は出す」

旅人君の写真を見せた後、ちらりと鞄から普通の一般人なら見たこともないような額の厚い紙束を男に見せ付ける。
すると男は驚いたような態度を見せた後、ニヤリ、と不適に笑った。

「そんな額じゃ足りねえなあ。まあ、そこの女もくれるんならいい・・・」

そのうざったい、気色の悪い言葉を最後まで聞く前に、俺の体は動いていた。
ガッ、と鈍い音がこの騒がしい部屋に響く。

「さっさと、吐けっつてんだろ。葛が」

その音は、紛れもなく、俺が発したものだった。

「な、手前っ！」

その瞬間、男の顔は恐怖に彩られる。
その原因は簡単だった。

「な、何で血が！？」

俺が、能力を発動したから。

俺の能力は液体を操る。つまり、水などを意思的に操作するというものだ。
液体にはさまざまなものがある。血も、例外ではない。
俺がいまこの男にしたのは血を操り、体から体外へ・・・つまり外へ出した、ということだ。
血を逆流させて殺すことも出来るが、それでは情報が手に入らない。

「ほんっとに、面倒くさいんだよねぇ。さっさと言ってくれる？」

「し、知らねえ！知らねえよそんな男！」

「嘘ですね」

そこですかさずトワが能力を使い、それを見抜く。

「クソッこの化け物共！」

「化け物で結構。ほら、さっさと吐けよ」

「アリア！」

突然、ミアさんの声が響いた。
騒ぎを聞きつけて戻ってきたらしかった。

「騒がしくなったと思ったら何事だ。何故その男に能力を使っている」

本気で怒っているらしく、真剣な顔をして俺を見据える。

「・・・」

それには答えずに男の上から退き、出血を止めてやった。

「はあ、何があったかは聞かん。アリアは俺らと来い」

「はい・・・」

「トワ、セーレ。お前らはミキと一緒に作業を続けてくれ」

「はい」

「・・・兄さん」

「ミキはトワ君達と一緒にいて」

「・・・うん」

「じゃあ、頑張ってね」

またいつも通り笑顔で短い声援を送ってミアさんの後に続いた。

「後で報告書出せよ」

「・・・了解」

面倒くさい、な・・・