59話『ささやかな楽しみ』*かさくら ページ16
カティはいつも食料と生活用品を買う場として、屋敷から一番近いであろう市街地に決めていた。
森の奥という世辞にも通行の便は良いとは言えず、片道だけでも一苦労であるから身を隠すにはもってこいなところではあったが、何かに出向くには少々不便さも感じている。
それ故いつもは頻繁に行きたくないからとまとめ買いで、カティ一人リアカーを走らせては陽気な市民の奇異な視線を受けつつの総計数万円の買い物を行っていた。
ただしセールの日には暇な団員を連れていくし、偶に気の良い店員からオマケでこっそり入れてくれたり、行き交う市民の多さに目をつけていた大道芸人もやって来るので、それ程憂鬱でもなく寧ろカティにとっての娯楽でもある。
あっ、鳩出てきましたね!
――そうだな
今日はそのまとめ買いの日でもなく、たまたま団員達が追加してくれと前もって頼まれた為至急入手との口実で、買いだめの頃の朝早くではなく真っ昼間に市街地の商店街に出向いていた。
団員達の頼まれ物はさして世間的には重要ではないが本人にとっては大事なもの、言わば好物のような物が殆どで、ストックが底を尽きるまでに帰ってしまえば良いという、昼の街も久しくカティは弾んでいる。
ただ一つ、アリアの飴に対しての愛着度合いについてで、言った通りに柑橘系の飴を買ったものの消費量の多さから、果たして二百グラム一袋で足りるのかどうかがちょっとばかし不安だった。
そして今はオマケで詰め合わせで余ったからと、ぽっちゃりとした体型にオランダ系のハネた赤毛が特徴的な菓子屋のおばちゃんに貰った林檎味のベッコウ飴を舐め尽くすまで手品師のショーを遠巻きから見ていた。
手品師の腕は確かなもので、胡散臭い口調を裏切るかのようなその鮮やかで摩訶不思議な奇術は驚きでカティの舌を止めてしまう。
スマートな体型からひょっこりと何処からか鳩が飛び出し、ガシャマルはしっかりとショーを見物して、ガシャマルであるカティも目を輝かせていた。
ふんわりと甘くて優しいベッコウ飴はいつの間にか食べる前よりか極端に薄くなり、それがカティに退きの時を知らせる。
真正面遠くにそびえ立つ時計塔えを見やると既に時計の長針は180度回転しており、また僅かに針が左へと揺らいだ。
――林檎味、いらなかったら食べれば良いっか
客として買いにいけばまだあるのだろうかと、まだ続くショーを惜しみながらカティはまた団員への依頼を遂行するべくまた菓子屋へと向かった。
60話『ハプニング』*Ruby→←58話『予感と直感と情感と』*コトハ
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リリィ・トパーズ(プロフ) - 編集します (2014年1月20日 23時) (レス) id: 242581b684 (このIDを非表示/違反報告)
Ruby(プロフ) - 編集終わりました。 (2014年1月20日 0時) (レス) id: 5399ff9106 (このIDを非表示/違反報告)
Ruby(プロフ) - 編集します。 (2014年1月20日 0時) (レス) id: 5399ff9106 (このIDを非表示/違反報告)
Ruby(プロフ) - 編集終わりました。 (2014年1月12日 18時) (レス) id: 5399ff9106 (このIDを非表示/違反報告)
Ruby(プロフ) - 編集します。 (2014年1月12日 17時) (レス) id: 5399ff9106 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:透明ノ空団 x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2013年10月13日 11時