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「…ゆうと？」
「！？」
声のした方を振り向くと、そこには3年の先輩であり、この寮の監督生である伊野尾が立っていた。
伊野尾は壊れたドアに気が付いたようで、眠そうな目を少しだけ大きくした。そして、
「裕翔、大丈夫？怪我してない？」
そう聞いてきたのだが、
「や！ち、違うんです、そのっ…」
裕翔は慌てて言い訳をしていた。
「あの、壊したんじゃなくて、その…壊れて、て…」
言いながら、裕翔はマズい…と思った。
寮の備品を壊したとなれば、叱られるだろうと思ったのだ。
それでとっさに嘘をついてしまったが、よくよく考えてみれば隠すこともないはずなのだ。
不注意で、寄り掛かったら壊れて…そう言えば、きっと事情をわかってもらえただろうに、
叱られないことばかりに気を取られ、ついバレバレの嘘をついてしまった。
言葉を詰まらせた裕翔に、伊野尾は静かに問う。
「…ふぅん、壊れてたんだ？」
「あ、えっと…」
「ん？」
「……壊れて、ました…」
上手く言葉が出て来ない。
「すみません、嘘です。寄り掛かったから壊れました」
そう言えばいいだけなのに、その一言が言えなかった。
裕翔は真面目だった。真面目ゆえに、叱られるのには慣れていない。
こんな状況で嘘をついて、うまく嘘を吐きとおすほどの経験もなければ、「ごめんなさい」と素直に嘘を認める方法もわからなかった。
今更謝れば、くだらない嘘をついたことを認めてしまうことになる。それを無性に恥ずかしく思った。
「…そ。」
「…っ、」
「裕翔、」
カメラを持っていない方の手をパっととられて、思わず顔を上げると、にこり、と伊野尾に笑いかけられる。
「こっち、」
「えっ？」
「時間あるでしょ？」
そのまま手を引かれ、何が何だかわからぬまま伊野尾に着いていくと、連れて来られたのは事務室だった。
事務室、というだけで何をされるのかわかった裕翔は、反射的に動きを止めたが…
ぐいっと手を引かれ、事務室の中へ入れられてしまった。
ふんわりとしたマッシュに、白い肌。
見た目は女の子のように華奢で、役職を持った先輩たちの中でも穏やかなほうで…。
それに、力ももっとないものだと思っていたのに…
それなのに、逆らえなかった。
されるがまま、という言葉が今の状況にぴったりだ。
何を考えているのかわからない伊野尾の不思議な雰囲気が、今はなんだかとても怖いものに感じた。
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みつあめ(プロフ) - ともさん» ありがとうございます！何度も読んでいただいて嬉しい限りです😭‼️かなり不定期の更新ですが、今後ともよろしくお願いします！ (2022年10月24日 0時) (
レス) id: 19e769908e (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 何回も読んでたお話だったので更新されて嬉しかったです！また楽しみにしています！ (2022年10月23日 17時) (レス) id: 5321468578 (このIDを非表示/違反報告)
みつあめ(プロフ) - ゆずかさん» コメントありがとうございます！可哀想な山田さん好きなんですよね…笑 お酒の話は構想としてありました！ので、時間はかかるかと思いますがお届けできるかと思います…！ (2020年5月2日 21時) (レス) id: 19e769908e (このIDを非表示/違反報告)
ゆずか(プロフ) - もしリクエストが可能であれば………調子になっちゃった年下君たちがタバコかお酒に手を出してみっちり叱られる作品も見てみたいです^ ^みつあめさんの作品大好きです。これからもお体に気をつけて無理なさらないでくださいね。ご自身のペースでの更新楽しみにしてます (2020年4月30日 2時) (レス) id: a1b53c5ee3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずか(プロフ) - お道具を使われる山ちゃんにゾクゾクしました。最高の作品をありがとうございます^_^ (2020年4月30日 2時) (レス) id: a1b53c5ee3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みつあめ | 作成日時：2019年12月8日 18時
