夏目漱石という男 ページ10
夏目は忙しいのか、あまり家には居なかった。
否、居れなかった。
その為一人の時が多くて毎日毎日、勉学に勤しみ、読書を進め、運動に励んだ。
そのお陰で大分成長する事が出来たと思う。
然し、家に帰っても夏目は居ない。
一人で食事をする事も多く、何度か涙を流した事もある。
けれど、それでも、この生活を嫌だと思った事は無い。
あの時救ってもらえなかったら今の自分は居なかったし、こんな風に成長する事も出来なかっただろう。
それに、忙しい夏目も休日には何処かへ連れて行ってくれたし、一緒に家で過ごしてくれた。それだけで、Aは満足だった。
一人だけど、夏目が、大好きだった。
*
何年も経ったある日の事。
最近は忙しかったのか、なかなか帰ってこなかった夏目が珍しく家に居たある日の事。
『…ポートマフィア…ですか?』
「嗚呼、Aに入ってほしくての」
笑った夏目とは逆に、Aは顔を顰めた。
『…ポートマフィアって非合法組織ですよね?ボクはそういうのに興味なんて欠片も無いんですが』
おぉ…はっきり云いよるのぉ…と呟くが、夏目は「然し…」と続けた。
「儂の弟子がそこの組織に居るんだがな。奴はやがてポートマフィアの首領となり、先陣をきることになる。そやつを支えてほしいんじゃ」
『…弟子って…諭吉?それとも鷗外ですか?』
夏目の弟子は名前だけなら知っている。
確か二人だったような…とAは呟いた。
「鷗外の方じゃ。鷗外はまだまだ頼りなくてのぉ。Aに助けを乞おうと思い」
『……それは貴方の"三刻構想"の為ですか?』
三刻構想
昼を軍警と特務課が、夜をポートマフィアが、そして夕刻を探偵社が取り仕切り町の均衡を保つ、夏目の構想。
前々から聞いていた、その構想はAにとっては大変どうでも良かったが、今となっては話が違う。
自分がそれに協力しなくてはならない可能性があるからだ。
「…駄目だろうか?」
『…』
「…」
『………………仕方ありません』
はぁ、とAが溜息と共に云った。
夏目は嬉しそうに微笑む。
「有難うな」
その笑顔にAは顰めていた顔を綻ばせる。
『夏目
その言葉が
後に、黒社会最悪のコンビと呼ばれた
"双黒"を創り上げる道を歩む事になるのを
まだAは知らない。
*
太宰と中也の出会い等の話は前編をどうぞ!
次からは一気に話が飛ぶので前編を見てからの方が分かりやすいかもです
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菜月羽(プロフ) - 金糸雀さん» 大丈夫ですよ!ありがとうございます!!早めに書き始められるように頑張ります!これからもよろしくお願いします! (2018年5月6日 6時) (レス) id: 386948e46a (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - すみません。少しミスってしまいました。 改めてDEADAPPLE編楽しみにしています! (2018年5月6日 2時) (レス) id: ecebeb527e (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - とても面白かったです。 DEADAPPLE編 (2018年5月6日 2時) (レス) id: ecebeb527e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜月羽 | 作成日時:2018年3月5日 20時