番外編・夏祭り ページ31
人々の喧騒に響き渡る祭囃子。
それぞれの屋台からは客引きの声、美味しそうな匂いが漂ってくる。
そう、今日は夏祭り。
『…暑い』
「人が多いからね。ほらA兄さんしっかり捕まって」
「どさくさに紛れて引っ付こうとするなよ！青鯖！」
『…だから暑いって』
右腕には太宰、左腕には中也とかなり異様な光景だが二人はAを挟み、喧嘩をしていた。
只でさえ、今日は紅葉に女物の浴衣を着せられあっついのに…とAは溜息混じりに呟く。
紅い綺麗な浴衣を見に纏い、長い銀髪をまとめかんざしを刺したその姿はまさに──
「"立てば芍薬、座れば牡丹歩く姿は百合の花"」
「…シャク…？ボタン…？」
「A兄さんの美しさの話だよ。こんな事も知らないなんてやっぱり脳筋」
「なッ！巫山戯んなよッ！手前は筋肉も無いひょろひょろ野郎の癖にッ」
『…嗚呼…もう』
この喧嘩は長引きそうだ…とAは諦め屋台を見回す。
目に入るのは林檎飴に綿飴、かき氷…全て甘い物であるが。
『なぁ、二人とも。何が食べたい？』
すると二人はピタリと口を閉ざし、Aを見上げる。
「焼きそば！」
「たこ焼き！」
キラキラと瞳を輝かせる二人は矢張り年相応と云うか、齢十五になるかならないかの幼い少年だ。
普段危険な職場に居る故にあまり感じられないが。
『…よし、今日はボクが何でも奢ってやろう。射的でも良い。面を買うのも良い。甘い物は一口くれよ？』
ニヤリと笑ったAに太宰と中也はにっこり笑って大きく頷く。自分の腕を掴む手にギュッと力が入ったのを感じAはゆっくり歩き始めた。
＊
「嗚呼ッもう」
「坊っちゃん惜しいね〜」
射的屋に心を惹かれたのか、ただ単に普段使えない銃に心を惹かれたのか。
太宰と中也は射的屋の前で騒いでいた。
『…二人ともいい加減諦めたらどうだ？』
「もう少しなんだッ！だからもうちょい！」
「どれだけ腕を伸ばしても落ちないんだけど？おじさんイカサマしてる？」
遂に店側を疑いだした二人だが屋台の主人は「そうか〜？あっこの子達の姉ちゃんか？やるかい？」と慣れた表情でAを誘い出した。
『うーん…』
射的はした事はないAだが拳銃の扱いは慣れている。折角だから何か景品を取ってやっても良いが…と先程から二人が狙っている景品に目をやる。
それは大きな猫の縫いぐるみだ。
中也は兎も角太宰がなぁ…と珍しい物を欲する二人にこの景品を取りたい気持ちに駆られた。
『…よし』
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菜月羽(プロフ) - 金糸雀さん» 大丈夫ですよ！ありがとうございます！！早めに書き始められるように頑張ります！これからもよろしくお願いします！ (2018年5月6日 6時) (
レス) id: 386948e46a (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - すみません。少しミスってしまいました。 改めてDEADAPPLE編楽しみにしています！ (2018年5月6日 2時) (レス) id: ecebeb527e (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - とても面白かったです。 DEADAPPLE編 (2018年5月6日 2時) (レス) id: ecebeb527e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菜月羽 | 作成日時：2018年3月5日 20時
