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女性がLupinの階段を上がろうとした時、誰かが店に入る音がした。
薄暗い上に、お互い相手が来る事など想定外で────否、少なくとも片方は分かっていた上で…
ぶつかりそうになった二人は互いに顔を見る。
すると青年が目を見開いた。
「これは綺麗なお嬢様…。済みません、しっかり前を見ていなかったので」
『いえ、私こそ考え事をしていたもので…』
女性───Aが咄嗟に口調を変え、ニッコリ微笑む。内心、さっきサングラスを掛けて良かったと安堵しながら。
「貴方の様な方が考え事…ですか？」
『…ふふっ。一寸、ある人の事を…ね』
「その人が羨ましい限りですよ。夜道にはお気を付けて下さいね。今日は足場も悪いですから」
『ご心配有難う。良い夜を』
「貴方も良い夜を」
踵を返し、Aは階段を上がる。肩に掛かっている黒外套が翻る。
耳元で揺れた紫水晶のイヤリングが揺れると青年が無意識に口を開いた。
「…まさか」
Aはその声に振り返らず、階段を上り切る。そして扉を開ける前、やっと振り返った。
綺麗な唇が動かし、声は出さずにその形の良い唇が言葉を紡ぐ。
またな
そしてAはLupinを出て行った。
「…ッ…また、ね」
眉をへの字に曲げつつ、口元には笑みを浮かべた青年が声を発した。
すると店の奥から声がした。
「太宰？来ているのか？」
「ちゃんと書類、書いてきましたか？」
「…嗚呼、書いてきたさ」
青年は───太宰は、最後にAが出て行ったドアを見据え、友人達の元に行った。
花の匂いが鼻腔をくすぐった。
＊
『…治に気付かれてしまったか…』
予想していた事だが、とAは大きな女優帽を被り、呟いた。
人気の無い路地裏の中、独り立ち止まる。
『…御免な、治』
Aの瞳から一つ、涙が溢れる。
『…また、会おうな』
降り続ける雨は直に止んできていた。
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菜月羽(プロフ) - 金糸雀さん» 大丈夫ですよ！ありがとうございます！！早めに書き始められるように頑張ります！これからもよろしくお願いします！ (2018年5月6日 6時) (
レス) id: 386948e46a (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - すみません。少しミスってしまいました。 改めてDEADAPPLE編楽しみにしています！ (2018年5月6日 2時) (レス) id: ecebeb527e (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - とても面白かったです。 DEADAPPLE編 (2018年5月6日 2時) (レス) id: ecebeb527e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菜月羽 | 作成日時：2018年3月5日 20時
