兄さんと黒の時代 ページ14
雨の降る夜。
真っ黒な傘をさし、同じ黒の高級そうなワンピースを着た一人の女性が歩いていた。
そしてある店の前で足を止める。
【Lupin】と書かれた灯りが時々点滅し、何処かムーディな雰囲気を出す店。
傘を下ろし、大きな黒い女優帽を取り女性は笑った。
サングラスが光を反射して、何処か怪しげに感じられた。
*
「今日は太宰が遅いな」
「今日まで太宰君は出張みたいですよ。これから報告書と相棒に追われるのでしょうね」
「…仕方ないな」
青年はそう云ってウイスキーの入ったグラスを傾けた。
織田作之助
異能力【天衣無縫】
その隣に座る丸眼鏡の青年は「仕方なく無いですよ。報告書は書かなくちゃ駄目ですから」と織田を諭した。
坂口安吾
異能力【堕落論】
「そういうものか?」
「そういうものです。そもそも、太宰君は書類関係の仕事をしなさすぎですよ」
情報員の立場からその情報源である書類が渡されないのは怒りを覚えるのだろうか。
安吾は苛立ちながらトマトジュースを口に含んだ。
『───ご機嫌よう?』
入り口の方からハイヒールの音を響かせて、一人の女性が現れた。
マスターに『何時もの』と頼んだ女性は織田と安吾に問い掛けた。
『お隣、宜しくて?』
「構いません」
『有難う』
何処かの令嬢なのだろうか。
高級そうなもので身を包む彼女は言葉遣いも丁寧だ。サングラスで顔の大半が隠れているが、うっすら笑みを浮かべた彼女はとても綺麗だと思う。
「一人か?」
『あら、バレてしまいましたか』
「ちょっ、織田作さん」
『良いんですの。"まだ"一人、ですから』
意味有りげに微笑んだ女性に織田と安吾は首を傾げる。
すると女性は鬱陶しげに綺麗な纏めた黒髪を解いた。然し、その黒髪は一瞬にして美しい銀髪に変わる。
「…なっ」
女性の耳元で紫水晶のイヤリングが揺れた。
『…ボクの事は知っているか?』
二人の驚いている暇もなく、声色、口調を変えた女性は大きなサングラスを外した。
下から覗いたのは輝く翡翠色の瞳。
「…貴方は」
その女性は二人の知っている人物だった。
「…ポートマフィア元幹部」
「島崎、A」
女性──もとい、Aはその中性的な顔を綻ばせ、来たウイスキーを傾ける。
『大正解』
グラスの中の氷がカラン、と音を立てた。
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菜月羽(プロフ) - 金糸雀さん» 大丈夫ですよ!ありがとうございます!!早めに書き始められるように頑張ります!これからもよろしくお願いします! (2018年5月6日 6時) (レス) id: 386948e46a (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - すみません。少しミスってしまいました。 改めてDEADAPPLE編楽しみにしています! (2018年5月6日 2時) (レス) id: ecebeb527e (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - とても面白かったです。 DEADAPPLE編 (2018年5月6日 2時) (レス) id: ecebeb527e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜月羽 | 作成日時:2018年3月5日 20時