双黒 ページ11
夜の闇に一つの爆発音が轟いた。
続いて上がる濃い煙。
その煙を見た人々は皆口を揃えて云った。
「黒社会、最悪のコンビだ」
その声、爆発音、狼煙を見ながらある一人が小さく呟いた。
『……………双黒の誕生だ』
その日の月は妙に紅く、また、大きかった。
*
その日のポートマフィアは上から下まで大騒ぎであった。否、大騒ぎなんていう言葉で纏めてはいけない。
"大混乱"していた。
「ッは…太宰!居たか!?」
「………居ない」
ドアを壊さんばかりに音を立て入って来たのはポートマフィア構成員の中原中也。
中也の問い掛けに首を横に振ったのは、ポートマフィア、歴代最年少幹部である太宰治。
二人はある人物を探していた。
「…居ない。監視カメラの映像を幾らさらって観ても何処にも映っていない。そっちは?」
「家にも居なかったぜ…。荷物も何もかも、まるで忽然と消えたみたいに…」
「「…何処に行った、A兄さん…」」
二人の声が揃い、消えていった。
彼等が探しているのは恩師である島崎A。
昨日まで同じ屋根の下で過ごしていた筈なのに、まるで神隠しにでも合ったかのように忽然と姿を消した。
「…中也、太宰」
「「…!姐さん」」
「Aは居たか?」
「…いえ」
凛とした声で二人を呼び、部屋に入って来たのはポートマフィア五大幹部である尾崎紅葉。
尾崎は中也が首を横に振ったのを見て、溜息をついた。
「困ったのぅ。Aも五大幹部の内の一人じゃ。拷問で情報を吐くとは思えぬが…」
そしてもう一度大きな溜息。
尾崎は先程の任務から帰還したばかりで疲労も溜まっている筈だ。だのに、ここまで必死になるのはAを大切に思っているからで。
その時だった。
「太宰君、中也君。少し話が有るのだけど」
「…首領!!」
失礼するよ、と入って来たのはポートマフィア首領、森鷗外。
突然の長の登場に動揺を隠し切れないが中也は背筋を伸ばした。
「…話ってなんですか」
「A君の事だよ」
不機嫌オーラを隠しきらない太宰はじとりと森を見る。その視線を受け、森は苦笑した。
「…A君は失踪した。けどね」
「それは仕方の無いことなんだよ」
「……仕方の無いことってなんですか」
「太宰君」
「A兄さんが組織を裏切る訳が無いッ!あの人が、今まで会った人の中で一番素晴らしい人が、そんな事する訳が無いッ!
それが仕方の無いことで済むと思わないで下さいッ!!!」
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菜月羽(プロフ) - 金糸雀さん» 大丈夫ですよ!ありがとうございます!!早めに書き始められるように頑張ります!これからもよろしくお願いします! (2018年5月6日 6時) (レス) id: 386948e46a (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - すみません。少しミスってしまいました。 改めてDEADAPPLE編楽しみにしています! (2018年5月6日 2時) (レス) id: ecebeb527e (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - とても面白かったです。 DEADAPPLE編 (2018年5月6日 2時) (レス) id: ecebeb527e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜月羽 | 作成日時:2018年3月5日 20時