94.ふたつ、ひとつ ページ19
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『…よし、』
温もりが離れていった。それは彼女の意思で。
腕で涙を拭くと、またいつもの笑顔に変わった。
俺はまだ心配だった。けど、多分それは無用。
『大丈夫。うん、もう、大丈夫だから。』
俺を心配させまいと、何度もそう言ってくれる。
もう、溢れ出していた悲しみの感情は無くなった。
Aの笑顔を見たら、そんな風に泣いてもいられなくなった。
玄関までの廊下を歩く。
出会った時に履いていた靴と同じ靴を履く。
笑顔でこちらを振り返る。
行動のひとつひとつを目に焼き付けた。
『絶対に、心配になって後をつけちゃダメだからね！』
“見送りは玄関まで！”
何度も何度もそう言われたのを思い出す。
赤「分かってる。大丈夫やって。信じてるから」
『うん！』
笑ってる。だから、俺も笑おう。
最後。これで、最後だからこそ。
Aとの最後の記憶は、笑ってるのがいい。
『じゃあ、行ってくるね』
いつも通り。
俺の目から視線を逸らさないで、見つめ続けていること以外は。
赤「気をつけて、な」
ドアノブに手をかけて、ノールックで右に回した。
片手で俺に手を振る。思わず振り返す。
『またね』
最後の瞬間まで、笑顔だった。
その笑顔は、ドアの先に広がる景色に吸い込まれていった。
そして、バタンとドアが閉まる。
まるで本を閉じるかのように。
そして俺は赤い鈴を取り出して、こう念じた。
“俺とAが一緒に暮らしていたという記憶を消して”
『オ安イ御用。ソノ出来事ニ関ワル全テノ人間カラ消シテ見セヨウ。キミ以外ネ。』
どこからともなく“あの声”が聞こえてくると、
どこかで何かと繋がれていた糸が、切れた音がした。
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朱狐(プロフ) - ハニーレモンさん» 本当ですか！ありがとうございます！励みにして頑張ります！ (2019年9月28日 8時) (
レス) id: 576e85210a (このIDを非表示/違反報告)
ハニーレモン - はじめまして最初から読みました。安くんの存在も気になります。すばるくんには主人公ちゃんを最後まで守ってあげてほしいです。楽しみに待っています。(*^-^*) (2019年9月28日 0時) (レス) id: 74ed2de143 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朱狐 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=tikuwa123456789&scr=novel/bokuranokako...
作成日時：2018年2月8日 19時
