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「え、じゃあそのままゴリ押して連れてきたの？屋上行こうよっていきなり？」
「ゴリ押しって！だってそれ以外思いつかねえんだもん」
「それで来てくれるAちゃんもAちゃんだけどね」
「いや、本当そうですよね……」
「ふはっ、ほら困っちゃってんじゃん」
自己紹介を交わした直後、早速下の名前で呼んでくる田中先輩にたじたじになりながらも、どうにかこうにか会話を続ける。
屋上の端っこの方に小さなベンチが設置してあって、女の子地面に座らせらんねえよ、と田中先輩は荷物置き場にしていたであろうそこを空けてくれた。
入っていいともよくないとも聞かないこの場所は、とりあえず私たち以外の人の気配がしないことが気になってあたりを見渡していたら、田中先輩がこともなげに言った。
「ここね、俺ら以外あんまり人来ないの」
「そうなんですか？」
「うん、俺は前から使ってるけどね、ここに来るの変なやつばっかりで、いつの間にか俺らの基地みたいになっちゃってるんだよね」
「へえ……」
「俺とジェシーはいつもいるし、後時々来る友達がいるんだけど、そんくらい。ちょっと理由があってね、息抜きしたい奴らが集まるのよ」
「息抜き、ですか」
「そー、俺らまだ子供だけどさ、面倒くさいことばっかじゃん？」
子供だから、かな。
だからここで皆気い抜きに来てんだよね。
そういたずらっぽく笑う田中先輩も、見た目からの推測でしかないけれど、きっとルイスくんと同じく所謂”目立ってる人”の部類で、何か思うところがあってそれが彼らの共通項なのだろうか。
そんな風に仲間内での空気が出来上がってそうなところに、私が来るなんて、結構変なことなんじゃないだろうか。
流されるままについてきてしまったけれど、今更のように不安になる。
「……私、来ないほうがよかったですか。邪魔っていうか」
「あ、んーん、そういう意味じゃ」
「ねえ、違うよ和田さん」
それまで口を開かずに私たちの会話を聞いていたルイスくんが、随分低い声を出した。
「言ったじゃん、和田さんのこと話してあるって」
「うん、聞いた、けど」
「樹も俺も、和田さんと話したいからここに呼んだんだよ。邪魔とか絶対に思わない」
「……」
「ね、だからそういうこと言わないで」
ちょっと険しい顔で、早口でルイスくんは言葉を紡ぐ。
そんなに一生懸命に言われたら、うなずくことしかできない。
また、理由もないのに。
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作者名：生駒 | 作成日時：2021年12月18日 23時
