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ジェシーくんと過ごす時間が増えた。
昼休みと、たまの放課後。
どうしてか彼は酷く察しがよくて、その日回り道をしようとしている私によく気がつく。
私から「一緒にいて」と縋ったことはない。
それをどうも彼は気に入らないようだ。
「ねえAちゃん、なんで今日も教えてくれなかったの」
「そんなの、言わないよ。私の事情で家にお邪魔させてくださいなんて。随分お世話になってるのに」
「そういうことじゃなくてさあ」
「ええ……？」
「寂しいよって、言えばいいんだよ俺に」
他人事みたいに、センチメンタルな言い方をするな、と今日も思った。
事あるごとに彼は私を『寂しい』という言葉で表すけれど、自分で自分をそんな風に思ったことはなかった。
誰かに寄りかかる、我儘を言う、一緒にいてほしいと求める。
それってとても傲慢なことで、私にとっては身の丈に合わない欲のように思える。
人との距離の取り方は、離れることしかわからないんだ。
それじゃあ何で私はジェシーくんと、こんなに自然に関係を築くことができたのだろう。
彼の普通以上の人懐っこさと強引さ、何故か私に向ける優しさ、以外に理由があるだろうか。
「大丈夫、俺んち友達に関しては緩いし、Aちゃんのこといい子だって言ってるし」
「……うん、前も言ってくれたね。わかってるよ」
「だあって、言ったって申し訳無さそうな顔ずっとしてるんだもん」
口を尖らせて不満げな目を向けられるけれど、苦笑いを返す。
これ以上ぬるま湯みたいな甘えで彼に寄りかかる自分を、想像して、自己嫌悪が湧き出そうになるから。
今が一番、贅沢なのだ。
：
「……？」
その日の昼休み、いつものように屋上の扉を開けたら、人影が目に入った。
だけどそれは見慣れたどちらかの姿ではなく、その人は座り込んで読書に興じる黒髪の男子生徒だった。
どうしようかな、ととっさに動けないでいると、扉の開閉の軋む音に気付いたようで、その人が顔をあげて目がかち合う。
少し長い前髪の奥で、その瞳が驚いて揺れたのがわかった。
ジェシーくんや樹先輩の友達だろうか、それともたまたまここに来ただけだろうか。
前者だとしたら、と思いなんとなく会釈をしたが、その人は戸惑ったように目をそらして、何か考える素振りを見せたあと、パタリと小説を閉じた。
そのまま立ち上がってこちらに向かってくる。
「あの、空けますんで」
「あ、」
「えっと、どうぞ」
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作者名：生駒 | 作成日時：2021年12月18日 23時
