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「関西弁なんだね」
わたしかけた紙袋をギュッと掴んで彼を引き止める。
「え？」
「永瀬、ああ、お姉さんの方、も、本当は関西弁なの？」
「・・・いや、俺だけっす」
受け取った紙袋をギュッと大事そうにもつ。
彼女もまた、とても丁寧に守られているのだろう、と思った。
「似てないね？」
三宅は、察しがいい方だと自負していた。
「・・・・・・血、繋がってないんで」
なんでもないことのふりをして、弟はそう言った。
ただただ、納得した。
彼女の心も、彼女の涙も。
あの時のあの強張った肩の意味も。
目の前の青年のまとうどこか痛々しい切実さも。
「・・・じゃあ、失礼します」
「ねえ」
踵を返そうとした彼に思わず声をかけた。
「なんですか？」
あ、姿勢の良さは、似てる。
「俺は、君の味方だと思うな」
本当はずっと、彼女に言いたかったことがあった。
それを今の彼に、言うべきだと思った。
「どうしても困ったら、俺がいると思ってよ。俺、多分助けになれるよ」
「・・・どういうことか、よくわかんないっす」
きょとんとした顔で、彼が答える。そりゃそうだろうと思った。
「わかんなくって良いよ。でも、そう覚えておいて」
だって俺は、あの時、
彼女のあの、潔癖さに、圧倒されてしまった人間だから。
美しい、とすら思ったんだ。
求めてた刺激を遥かに超えるものを得たことも、その結果も、彼女もこの若者も、知らないけど。
お礼をしないと、いけないしね。
「俺は彼女の味方だし、君の応援をする」
そう決めてたんだよ。
「・・・全然わかんないけど、ありがとうございます？」
「ははっ！正直なところは、そっくりじゃん」
なるほど、健やかには育てられたんだな。
帰っていく二人の背中を見ながら、なんだかインスピレーションが降ってきた感じがした。
久々に新しい企画が生まれそう。企画部にちょっかい出してみようかな。
三宅が社内で好きにできるのは、ひとえに、7年前取った広告大賞のおかげだった。
三宅がメインで作った飲料水のCMが、その年の賞をとり、その後連作となったシリーズで一躍業界でのポジションを確立した。
結局三宅自身はそれをまぐれと捉えて、別のことに魅力を感じて部署をうつったのだが。
あの頃あちこちにはりだされたコピーは、あの面接の日に書いたのだ。
凛とした姿で立つ女性の後ろ姿と、握り締めて赤くなった手。
”世界はもっと、君に優しい”
彼女と彼が、幸福でありますように。
続く
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萩花(プロフ) - 凄く面白くて一気読みしてしまいました…！2人の愛情深さに感動してしまいます。これからも楽しみにしております (2022年5月7日 6時) (
レス) @page21 id: 24d453562d (このIDを非表示/違反報告)
Nano.(プロフ) - ずーっと楽しみに待っております！！ (2020年7月11日 1時) (レス) id: 03ff967dd1 (このIDを非表示/違反報告)
はなうたこ(プロフ) - こぐまさん» 感想ありがとうございます！励みになります。近々次もアップします〜！ (2020年5月6日 15時) (レス) id: 186150732f (このIDを非表示/違反報告)
はなうたこ(プロフ) - ななみさん» いつもありがとうございます！感想嬉しいです。優しい世界を描きたくて書いてるので優しいと思ってもらえてよかったです（ ; ; ） (2020年5月6日 15時) (レス) id: 186150732f (このIDを非表示/違反報告)
こぐま(プロフ) - 感動です…涙、涙ですpq井ノ原さんの言葉が響きました。続きとっても楽しみにしています！更新頑張って下さい^^ (2020年5月6日 12時) (レス) id: 43fe0080df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はなこ | 作成日時：2020年4月28日 21時
