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靴出しといてー、彼女がそういうので
素直に彼女の靴を選びに玄関に行く自分は、従順なのか健気なのか。
靴は白でもええやろ、とスニーカーを出す。
綺麗めのスニーカーはお気に入りだが、なかなか平日は出番がない。
「あ、Aー、バッグはこないだ買った黒のレザーのちっこいのな」
「んー」
パタパタ、と音でもしそうな動きで支度して回る彼女を見つめる。
29歳、とはみんなこんなもんなのだろうか、とぼんやりと思う。
「A」
「んー？」
支度する背中に話しかける。
「今日何時まで？」
「ん？わからん。話が盛り上がればー夕方？」
小さなバッグにぎゅうぎゅうと荷物を詰める。そんな入らんやろ、と思うが口出すと怒るので黙って見守る。
「俺もあの辺行くんだよね、原宿だけど」
「奇遇じゃん。一緒行く？」
「いや俺は午後だから。でも終わったらと思って」
「なになに、私と青山デートがしたいのか」
後ろ姿でも顔が笑ってるのがわかる。
「うざ」
「ふはは」
「連絡してよ」
迎えに行くし、と付け加える。
迎えがいるような時間じゃないだろうが。
「おけおけ、終わったら連絡するわ。ひとり？」
「いや、海人。でもあいつ今日夕方からシフト入ってたから途中解散やな」
「ふーん。そういやあんた最近バイト少なくない？」
「そんなことないで」
「そ？まあもうすぐ冬休みだし、いくらでも働けるもんね」
「そんな感じ」
よしっ、と最後に鏡に向かって口紅を塗っていた彼女がようやくこっちを向く。
「どうだ！」
「ええやん、
俺のコーデ」
「おい」
「ふはは。かわいいかわいい。大人みたいやん」
「大人なんだよ」
口紅の塗られた大人の唇で、10代のように笑う。
じゃ、いってくんねー、と彼女が玄関に置かれた靴に迷いなく足を入れる。
玄関まで追いかけて、彼女の姿を眺めていた。
顔を合わせて見送ること、を欠かさないのは、いつからだったか。
「いってきまーす！」
「おーいってらっしゃい」
彼女が後ろ手でドアを閉める、と思ったらくるりと振り返る。
「A、ちゃん、ね。
あるいは、姉ちゃん」
にやりと笑って、返事する。
「いってらっしゃい、A」
「....くそがき」
はは、と彼女が笑う。
つられて自分も笑う。
「いってきまーす！」
姉ちゃんなんて、死んでも呼ばない。
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まな - 一気読みしてしまいました！！無理のない頻度での投稿、楽しみにしてますね！ (2020年4月14日 0時) (
レス) id: 9c457a3c27 (このIDを非表示/違反報告)
はなうたこ(プロフ) - Nano.さん» ありがとうございます...！なるべくサクサクいけるよう頑張ります...！ (2020年3月17日 18時) (レス) id: 186150732f (このIDを非表示/違反報告)
Nano.(プロフ) - とても楽しくみています。次の更新をお待ちしています！ (2020年3月16日 12時) (レス) id: 03ff967dd1 (このIDを非表示/違反報告)
はなうたこ(プロフ) - ななみさん» ありがとうございます！このシーンから初めに思いついて描き始めたので嬉しいです！ (2020年2月19日 14時) (レス) id: 186150732f (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - ど、ドキドキしました。キスしちゃうかと思った。廉君にとって、血のつながりはないけど、誰よりも何よりも、きっと自分よりも大切な存在が、お姉さんなんですね。すごく切なくて、大切さがひしひしと伝わってきました。 (2020年2月17日 15時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はなこ | 作成日時：2020年2月13日 12時
