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「A〜」
そろそろ起こすか、とすやすやと眠る彼女に話しかける。
「A」
起こすつもりはあるのだが、驚かせたくないと、つい声が小さくなる。
「A、起きて」
「.......」
「風呂入らな、A」
眠る彼女は、メイクをしていても、どこかあどけない。
酒で赤くなった顔が余計に、幼さを感じさせる。
「昔も、こんなんやったかな」
頭の中に、制服姿の彼女がフラッシュのようにちらつく。
穏やかな春の日、自分を見て微笑んだ、まだ幼さの残る彼女。
「なあ、A」
「........ん、.....廉」
「A？」
名前を呼ばれて、起きたか、と思い彼女が目を開けるのを待つが、一向に開かない。
「.......A？」
寝言、だったのだろうか。
廉は、反応のない彼女をじっと見つめる。
彼女は今、寝言で自分を呼んだのだろうか。
どんな夢を、見ているのだろうか。
俺の、夢だろうか。
半ば無意識だった。
「A」
廉は、小さく彼女を呼びながら、随分前に彼女より大きくなった体を折って、背もたれに体重をかける。
ソファーがかすかに音を立てた。
それでも彼女は反応しない。
彼女の、自分とは明らかに違う白い皮膚を確認する様に緩やかに顔を近づける。
あと、
「.....A」
1cm。
〜〜♪
"お風呂が、沸きました"
ぴたっ、と体が強張るように止まった。
瞬間、現実に引き戻される気持ちだった。
廉は慌てて体を起こしたが、
彼女は今の音にも目を覚まさない。
何もなかったかのように眠る彼女。
実際、何もなかったのだが。
目を、覚まして欲しいのか、欲しくないのか、廉にはもうわからなかった。
「何をしてんねん」
触れられなかった唇が震えた。
くそ、と口汚く自分を罵りながら、前髪を掻き毟る。
鼻腔に残る、自分と同じ香り。
それが無性に、泣きたくなった。
「あかん、俺先はいろ」
居た堪れなくなった廉は、一番風呂を掠め取ることにした。
出たら、今度こそ彼女を起こそう。
ぐずる彼女を洗面所に放り込んで、その間に岸にもらった夜食を温めよう。
そうやって、今日も
繰り返してきた夜をまた過ごそう。
失うのが、あまりに怖すぎた。
大きなものを無くしたとき、残ったたった一つのもの。
廉の手を掴んだ、たったひとりのひと。
彼女は永瀬A。
廉のただ一人の家族。
世界に一人の姉。
8歳の時に出会った、血の繋がらない、僕の姉。
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まな - 一気読みしてしまいました！！無理のない頻度での投稿、楽しみにしてますね！ (2020年4月14日 0時) (
レス) id: 9c457a3c27 (このIDを非表示/違反報告)
はなうたこ(プロフ) - Nano.さん» ありがとうございます...！なるべくサクサクいけるよう頑張ります...！ (2020年3月17日 18時) (レス) id: 186150732f (このIDを非表示/違反報告)
Nano.(プロフ) - とても楽しくみています。次の更新をお待ちしています！ (2020年3月16日 12時) (レス) id: 03ff967dd1 (このIDを非表示/違反報告)
はなうたこ(プロフ) - ななみさん» ありがとうございます！このシーンから初めに思いついて描き始めたので嬉しいです！ (2020年2月19日 14時) (レス) id: 186150732f (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - ど、ドキドキしました。キスしちゃうかと思った。廉君にとって、血のつながりはないけど、誰よりも何よりも、きっと自分よりも大切な存在が、お姉さんなんですね。すごく切なくて、大切さがひしひしと伝わってきました。 (2020年2月17日 15時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はなこ | 作成日時：2020年2月13日 12時
