あなたと 【プロ野球短編集】

上本博紀『HOME』(B'z) ページ5

「なんでそんなこと言うの？」

「じゃけ、俺は否定しとらんじゃろ！？」


くだらないことでイラっときて、ついつい声を張り上げてしまった。

するとAの目から、一筋の涙がこぼれた。


まただ

Aのことを傷つけたのは俺なのに

また、後悔だけがつのる。

感謝の気持ちのほうが断然多いのに、なんで俺はいつもこう、上手くやれないんだろう


「ごめん」


そう一言だけ言って、俺はAを抱きしめた。


「こっちこそ、ごめん」


そしたらAも謝る。いつものパターンだ。

毎日のことだからか、Aは心のどこかで諦めかけているのかもしれない。


深呼吸をひとつおいて、俺は口を開いた。


「やっとここまで来たのにさ、言葉ひとつ足りないくらいで諦めたらいけんと思う。

愛されるばかりじゃ本当の恋人にはなれてない気がせん？」


Aは俺の胸に顔をギュッと埋めて頷いた。


「ちゃんと言い返していいんよ」


頷くだけのAだが、ちゃんと分かってくれていると思う。


俺たちの目指すべき場所に、少しだけ近づいた気がした。







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杉谷拳士『小さな恋のうた』(MONGOL800)→←北條史也『キセキ』(GReeeeN)

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