本当の試験 ページ32
それから数十分、雨も降り始めてきたのに状況は分からず攻撃しては避けられての繰り返しだ。
「もういいでしょ、私が」
「ダメだ...私は1人で戦い抜ける、力がいる！」
「っ...！」
1人で...その言葉は、私にとって酷く心に刺さった。
私が今こうしてクラピカと一緒にいるのは、彼の抱えるものを一緒に背負いたかったからだ。無理をさせたくなかったから...
なのに、彼自身は変わらず1人で背負う道を選ぼうとするのだ。
「私だって...いるのに」
その消え去りそうな声は、きっと全て雨音でかき消されて誰にも届かなかっただろう。だけど、今はそれでいい気がした。
その様子を見た男はこちらにハンター証を投げ、くるりと後ろを向いた。
「着いてきな。教えてやる」
男は何か決意したようにこちらを見ると、口角を上げて歩き出した。
「本当の試験は、これからだ」
「入れ、俺の家だ。まず全員びしょ濡れだから体拭けよ...話はそれからだ」
家に入るとすぐにタオルを投げられ私はクラピカの髪を優しく拭いた。
「一応言っておくけど、私少し怒ってるから」
「...すまない。無理を言った」
「それもそうだけど！とりあえず、風邪ひいちゃうからちゃんと拭いてね」
頬に触れるとその体温はとても低く、何度か転んでしまった為かすり傷もついている。
「綺麗な顔なのに...あんまり傷つけないでよ」
消毒し終えた傷に薬を塗るとなんだかハンター試験の時を思い出す。つい最近の出来事なのにもう懐かしく感じてしまうくらいだ。
「次は風呂入れ。ほらさっさと」
家に上がるや否や首根っこを掴まれて脱衣所へ放り投げられた。あの人投げるの好きすぎでしょ...全体的に雑。
ってゆうか、なんで私たち二人とも...
「あの！まさか2人で入れなんて言うんじゃないですよね...」
「流石に年頃の女性とは私も入れない」
「なんだお前ら、兄妹じゃなかったのか？」
キョトンとした顔の男に、私とクラピカは揃って「え？」と間抜けな声が出た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
僕です。(プロフ) - はにゃ？さん» ありがとうございます！そう言って貰えて嬉しいです😊応援に応えられるよう更新頑張りますね！ (2023年4月15日 15時) (
レス) id: 44f4c2417a (このIDを非表示/違反報告)
はにゃ？ - とても読みやすいです。これからも応援してます。 (2023年4月15日 2時) (レス) id: 1a9c7abd60 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：僕です。 | 作成日時：2023年4月11日 17時
